三角関数の加法定理

三角関数の加法定理

三角関数の加法定理

  1. \(\sin (\alpha+\beta)=\sin \alpha \cos \beta+ \cos \alpha \sin \beta\)
  2. \(\sin (\alpha-\beta)=\sin \alpha \cos \beta- \cos \alpha \sin \beta\)
  3. \(\cos (\alpha+\beta)=\cos \alpha \cos \beta-\sin \alpha \sin \beta \)
  4. \(\cos (\alpha-\beta)=\cos \alpha \cos \beta+\sin \alpha \sin \beta \)
  5. \(\tan (\alpha+\beta)=\displaystyle \frac{\tan \alpha+\tan \beta}{1-\tan \alpha \tan \beta}\)
  6. \(\tan (\alpha-\beta)=\displaystyle \frac{\tan \alpha-\tan \beta}{1+\tan \alpha \tan \beta}\)

以上 \(6\) つの公式が、三角関数の加法定理です。
最重要公式です。
必ず暗記しなくてはいけません。

なぜこの公式が成り立つのか。
これについては、まずは保留です。学習に余裕ができたら、加法定理の導出について調べてみると良いですが、

それよりも、「しっかり覚えて使いこなせること」
これを最優先してください。

1、3、5くらいを暗記することを億劫がっていてもしょうがないですね。
1. \(\sin (\alpha+\beta)=\sin \alpha \cos \beta+ \cos \alpha \sin \beta\)

3. \(\cos (\alpha+\beta)=\cos \alpha \cos \beta-\sin \alpha \sin \beta \)

5. \(\tan (\alpha+\beta)=\displaystyle \frac{\tan \alpha+\tan \beta}{1-\tan \alpha \tan \beta}\)

なんでもいいから暗記しましょう。
2,4,6は覚えた1,3,5の符号の逆にするだけです。

また5.の \(\tan\) の加法定理は 1,3さえ覚えていれば容易に導けますので、
覚えなくともなんとかなります。
しかし、これくらいは暗記してしまう方が良いかなと思います。

例題1

加法定理を用いて、次の三角関数の値を求めなさい。

(1)\(\sin 75°\)
(2)\(\cos 105°\)
(3)\(\tan 165°\)

解説

まずは弧度法ではなく、度数法で練習しましょう。
「加法定理」だけに頭を使って欲しいからです。

(1)\(\sin 75°\)

\(75°\) を有名角の和か差で表しましょう。
\(45°+30°\) が最もわかりやすいでしょう。
※他にも、\(120°-45°\) と分けることで、値を求めることができます。

\(\sin 75°=\sin (45°+30°)\)
\(=\sin 45° \cos 30°+ \cos 45° \sin 30°\)

\(=\displaystyle \frac{1}{\sqrt{2}} \cdot \displaystyle \frac{\sqrt{3}}{2}+\displaystyle \frac{1}{\sqrt{2}} \cdot \displaystyle \frac{1}{2}=\displaystyle \frac{\sqrt{6}+\sqrt{2}}{4}\)

(2)\(\cos 105°\)

\(\cos 105°=\cos (60°+45°)\)
\(=\cos 60° \cos 45°- \sin 60° \sin 45°\)

\(=\displaystyle \frac{1}{2} \cdot \displaystyle \frac{1}{\sqrt{2}}-\displaystyle \frac{\sqrt{3}}{2} \cdot \displaystyle \frac{1}{\sqrt{2}}=\displaystyle \frac{\sqrt{2}-\sqrt{6}}{4}\)

※ \(135°-30°\) など、別解ありです。

(3)\(\tan 165°\)

\(\tan 165°=\tan (120°+45°)\)

\(=\displaystyle \frac{\tan 120°+\tan 45°}{1-\tan 120° \tan 45°}\)

\(=\displaystyle \frac{(-\sqrt{3})+(1)}{1-(-\sqrt{3})×(1)}\)

\(=\displaystyle \frac{1-\sqrt{3}}{1+\sqrt{3}}\)

分子分母に、\(1-\sqrt{3}\) をかけて、分母を有理化します。

\(=\displaystyle \frac{(1-\sqrt{3})^2}{(1+\sqrt{3})(1-\sqrt{3})}\)

\(=\displaystyle \frac{4-2\sqrt{3}}{-2}\)

\(=-2+\sqrt{3}\)

※ \(135°+30°\) など、別解ありです。

例題2

加法定理を用いて、次の三角関数の値を求めなさい。

\(\cos (-\displaystyle \frac{\pi}{12}) \)

解説

さて、普通は弧度法で処理します。

\(-\displaystyle \frac{\pi}{12} \) を有名角の和か差で表すのですが・・・

よほど弧度法に慣れている人でないと、すぐにはピンときませんね。

一度「度数法」に戻してから考えることをおススメします。

\(-\displaystyle \frac{\pi}{12} =-15°\) ですから、

\(-15°=30°-45°\)
とか
\(-15°=45°-60°\)
などが挙げられます。

\(-15°=45°-60°\) で計算します。

\(\cos (45°-60°)=\cos 45° \cos 60°+\sin 45° \sin 60° \)

\(=\displaystyle \frac{1}{\sqrt{2}} \cdot \displaystyle \frac{1}{2}+\displaystyle \frac{1}{\sqrt{2}}\cdot \displaystyle \frac{\sqrt{3}}{2} \)

\(=\displaystyle \frac{1}{2\sqrt{2}}+\displaystyle \frac{\sqrt{3}}{2\sqrt{2}}\)

\(\displaystyle \frac{\sqrt{6}+\sqrt{2}}{4}\)

\(\tan\) の加法定理の導き方

さて、\(\sin\)と \(\cos\) の加法定理から \(\tan\) の加法定理を導いておきましょう。

\(\tan (\alpha+\beta)=\displaystyle \frac{\sin (\alpha+\beta)}{\cos (\alpha+\beta)}\)

\(=\displaystyle \frac{\sin \alpha \cos \beta+ \cos \alpha \sin \beta}{\cos \alpha \cos \beta-\sin \alpha \sin \beta}\)

分子分母を \(\cos \alpha \cos \beta\) で割ります。

やや複雑なので、分子と分母をわけて見ていきましょう。
※もちろん自分で計算するときに、必ずしもわけなくて良いですよ!

分子÷ \(\cos \alpha \cos \beta\) \(=\displaystyle \frac{\sin \alpha \cos \beta}{\cos \alpha \cos \beta}+\displaystyle \frac{\cos \alpha \sin \beta}{\cos \alpha \cos \beta}\)

\(=\tan \alpha+\tan \beta\)

分母÷ \(\cos \alpha \cos \beta\)\(=\displaystyle \frac{\cos \alpha \cos \beta}{\cos \alpha \cos \beta}-\displaystyle \frac{\sin \alpha \sin \beta}{\cos \alpha \cos \beta}\)

\(=1-\tan \alpha \tan \beta\)

つまり、
\(\tan (\alpha+\beta)=\displaystyle \frac{\tan \alpha+\tan \beta}{1-\tan \alpha \tan \beta}\)

まあ30秒程度でしょうか。
学習初期は忘れたら導くを繰り返すのはいいかもしれませんが・・・
しかし受験までには自然と暗記してしまうくらいが普通だと思います。