乗余の定理

乗余の定理

乗余の定理

多項式 \(P(x)\) を \(1\) 次式 \(x-a\) で割ったときの余りは \(P(a)\)
※ \(x-a=0\) を満たす \(x\) の値、 \(a\) を代入

多項式 \(P(x)\) を \(1\) 次式 \(ax+b\) で割ったときの余りは \(P(-\displaystyle \frac{b}{a})\)
※ \(ax+b=0\) を満たす \(x\) の値、 \(-\displaystyle \frac{b}{a}\) を代入

なぜ成り立つのか、ということが気になる以前に、

具体例を見ないと何を言っているのかわからない、という所ですね。

具体例1

\(P(x)=x^3-x^2-4x+3\) を \(x-2\) で割ったときの余りは、

\(P(2)=2^3–2^2-4\cdot2+3=-1\)

つまり、
\(P(x)=x^3-x^2-4x+3\) を \(x-2\) で割ったときの余り \(-1\) です。

乗余の定理とはこういう意味です。
実際にわり算をしなくとも、余りが求まるよ、というのが「剰余の定理」です。
※乗余の定理を用いても、商は求まりません。

具体例2

\(x^2+1\) を \(2x-1\) で割ったときの余りを求めなさい。

\(P(x)=x^2+1\) とすると、

\(P(\displaystyle \frac{1}{2})=(\displaystyle \frac{1}{2})^2+1=\displaystyle \frac{5}{4}\)

これが求める余りです。

※ \(2x-1=0\) を満たす \(x=\displaystyle \frac{1}{2}\) を代入します。

乗余の定理がなぜ成り立つのか

\(P(x)÷(x-a)=Q(x) あまり R\) とします。

このことを等式で表すと

\(P(x)=(x-a)Q(x)+R\)

となります。

\(13÷4=3 あまり1\)
という割り算は、
\(13=4×3+1\)
と等式で表現することができますね。

さて、
\(P(x)=(x-a)Q(x)+R\)
ですが、
\(x=a\) のとき、
\(P(a)=(a-a)Q(a)+R\)

よって、\(P(a)=R\)
が成り立ちます。

これで剰余の定理の成立がわかりました。

例題1

整式 \(x^3+x^2-2x+1\) を \(1\) 次式 \(x+2\) で割ったときの余りを求めなさい。

解説

\(P(x)=x^3+x^2-2x+1\) とおくと、\(x+2\) で割った余りは、剰余の定理より、\(P(-2)\) です。
\(P(-2)=(-2)^3+(-2)^2-2\cdot(-2)+1=1\)
よって、求める余りは、\(1\)

例題2

整式 \(x^3+ax^2+bx-12\) は \(x-1\) で割ると \(5\) 余り、 \(x+3\) で割ると \(-3\) 余る。このとき、定数 \(a,b\) の値を求めなさい。

解説

\(P(x)=x^3+ax^2+bx-12\) とおく。
剰余の定理より、
\(P(1)=5\) つまり、
\(P(1)=1^3+a\cdot 1^2+b\cdot 1-12=5\)
より、\(a+b=16\) ・・・①

また、\(P(-3)=-3\) つまり、
\(P(-3)=(-3)^3+a\cdot (-3)^2+b\cdot (-3)-12=-3\)
より、\(9a-3b=36\) ・・・②
①、②より、\(a=7,b=9\)

例題3

整式 \(P(x)\) は \(x-1\) で割ると \(2\) 余り、\(x+2\) で割ると \(-1\) 余る。このとき、
\(P(x)\) を \((x-1)(x+2)\) で割ったときの余りを求めなさい。

解説

多項式を \(2\) 次式 \((x-p)(x-q)\) で割った余りは \(ax+b\) とおけます。
余りの次数は、割る式の次数より低くなるからです。

\(P(x)=(x-p)(x-q)Q(x)+ax+b\)


では解いていきましょう。

\(P(x)\) を \(2\) 次式 \((x-1)(x+2)\) で割ったときの商を \(Q(x)\) ,余りを \(ax+b\) とすると

\(P(x)=(x-1)(x+2)Q(x)+ax+b\)

\((x-1)\) で割ったときの余りが \(2\) なので、
\(P(1)=2\)
\(P(1)=(1-1)(1+2)Q(1)+a+b\)
\(=a+b\)
よって、\(a+b=2\)・・・①

\((x+2)\) で割ったときの余りが \(-1\) なので、
\(P(-2)=-1\)
\(P(-2)=(-2-1)(-2+2)Q(-2)-2a+b\)
\(=-2a+b\)
よって、\(-2a+b=-1\)・・・②

①②を連立して解けば
\(a=1\)
\(b=1\)

よって、求める余りは \(ax+b\) なので、 \(x+1\)