和の記号Σ (シグマ)・その3
和の記号 \(\varSigma\)(シグマ)の性質
\(\displaystyle \sum_{ k = 1 }^{ n } (a_{ k }+b_{ k })= \displaystyle \sum_{ k = 1 }^{ n } a_{ k }+\displaystyle \sum_{ k = 1 }^{ n } b_{ k }\)
\(p\) は \(k\) に無関係な定数とすると
\(\displaystyle \sum_{ k = 1 }^{ n } pa_{ k }= p\displaystyle \sum_{ k = 1 }^{ n } a_{ k }\)
上の公式だけを見ると、やはりお堅い、難しいイメージですね・・・
決して難しことを言っていませんので、具体例で見ていきましょう!
例題1
次の和を求めなさい。
\(\displaystyle \sum_{ k = 1 }^{ n } k(k+1)\)
解説
どんな数列の和なのかというと、
\(a_{ 1 }=1\cdot(1+1)=2\)
\(a_{ 2 }=2\cdot(2+1)=6\)
\(a_{ 3 }=3\cdot(3+1)=12\)
\(a_{ 4 }=4\cdot(4+1)=20\)
\(2,6,12,20\cdots\) という数列の和です。
等差数列でも等比数列でもない数列ですね。
※階差数列といいます。後ページにて改めて学習します。
どうやって求めたら良いのか検討もつきませんが、ここで \(\varSigma\)(シグマ)の性質
を利用します。
\(\displaystyle \sum_{ k = 1 }^{ n } k(k+1)=\displaystyle \sum_{ k = 1 }^{ n } (k^2+k) \) なので、
\(\displaystyle \sum_{ k = 1 }^{ n } (a_{ k }+b_{ k })= \displaystyle \sum_{ k = 1 }^{ n } a_{ k }+\displaystyle \sum_{ k = 1 }^{ n } b_{ k }\) を用いて、
\(\displaystyle \sum_{ k = 1 }^{ n } (k^2+k) =\displaystyle \sum_{ k = 1 }^{ n } k^2+\displaystyle \sum_{ k = 1 }^{ n } k \)
となります。
あとは、べき乗の和の公式を適用するだけです。
\(\displaystyle \sum_{ k = 1 }^{ n } k^2+\displaystyle \sum_{ k = 1 }^{ n } k \)\(=\displaystyle \frac{1}{6}n(n+1)(2n+1)+\displaystyle \frac{1}{2}n(n+1)\)
\(=\displaystyle \frac{1}{6}n(n+1)\{(2n+1)+3\}\)
\(=\displaystyle \frac{1}{3}n(n+1)(n+2)\)
これで求まりました。
\(\displaystyle \sum_{ k = 1 }^{ n } (a_{ k }+b_{ k })= \displaystyle \sum_{ k = 1 }^{ n } a_{ k }+\displaystyle \sum_{ k = 1 }^{ n } b_{ k }\)について
ちなみに上で見た計算は、↓のように計算して出したということです。
\(\begin{eqnarray}\displaystyle \sum_{ k = 1 }^{ n } (k^2+k) =1& +&1 \\ +4&+ & 2\\ +9& + & 3 \\ +16 & + & 4 \\ +25 & + & 5 \\ \cdot & + &\cdot \\ \cdot & + &\cdot \\\cdot & + &\cdot \\ +n^2& + & n\end{eqnarray}\)
たてに足し算を見れば、「\(2\) 乗の和」と 「\(1\) 乗の和」の和になっていますね。
つまり、
\(\displaystyle \sum_{ k = 1 }^{ n } (k^2+k) =\displaystyle \sum_{ k = 1 }^{ n } k^2+\displaystyle \sum_{ k = 1 }^{ n } k \)
です。
先ほど「公式」として持ち出したましたが、当たり前に成り立つ性質ですね。
\(\displaystyle \sum_{ k = 1 }^{ n } pa_{ k }= p\displaystyle \sum_{ k = 1 }^{ n } a_{ k }\)について
\(\displaystyle \sum_{ k = 1 }^{ n } (a_{ k }+b_{ k })= \displaystyle \sum_{ k = 1 }^{ n } a_{ k }+\displaystyle \sum_{ k = 1 }^{ n } b_{ k }\)
ですが、\(a_{ k }=b_{ k }\) のとき、
\(\displaystyle \sum_{ k = 1 }^{ n } 2a_{ k }= \displaystyle \sum_{ k = 1 }^{ n } (a_{ k }+a_{ k })\)\(=\displaystyle \sum_{ k = 1 }^{ n } a_{ k }+\displaystyle \sum_{ k = 1 }^{ n } a_{ k }=2\displaystyle \sum_{ k = 1 }^{ n } a_{ k }\)
つまり、\(\displaystyle \sum_{ k = 1 }^{ n } 2a_{ k }= 2\displaystyle \sum_{ k = 1 }^{ n } a_{ k }\)
このことから、
\(\displaystyle \sum_{ k = 1 }^{ n } pa_{ k }= p\displaystyle \sum_{ k = 1 }^{ n } a_{ k }\)
が成立することがわかります。
例題2
次の和を求めなさい。
\(\displaystyle \sum_{ k = 1 }^{ n } (3k+2)\)
解説
上で学んだことを再現する練習ですよ。
シグマの性質通り、バラバラに分解します。
\(\displaystyle \sum_{ k = 1 }^{ n } (3k+2)=\displaystyle \sum_{ k = 1 }^{ n } 3k+\displaystyle \sum_{ k = 1 }^{ n } 2\)
\(2\) つの項に割れました。
\(1\) つずつ見ていきましょう。
前半
\(\displaystyle \sum_{ k = 1 }^{ n } 3k=3\displaystyle \sum_{ k = 1 }^{ n } k\)\(=3×\displaystyle \frac{1}{2}n(n+1)=\displaystyle \frac{3}{2}n(n+1)\)
後半
\(\displaystyle \sum_{ k = 1 }^{ n } 2= \underbrace{2+2+2+\cdots+2}_{ n }=2n\)
よって、
\(\displaystyle \sum_{ k = 1 }^{ n } (3k+2)=\displaystyle \sum_{ k = 1 }^{ n } 3k+\displaystyle \sum_{ k = 1 }^{ n } 2\)\(=\displaystyle \frac{3}{2}n(n+1)+2n\)
\(=n\{\displaystyle \frac{3}{2}(n+1)+2\}\)
\(=\displaystyle \frac{1}{2}n(3n+7)\)
別解
ちなみに、この数列って
\(5,8,11,14\cdots\) 等差数列ですね。
等差数列の和の公式より、
\(S=\displaystyle \frac{1}{2}n\{5+(3n+2)\}\)
\(=\displaystyle \frac{1}{2}n(3n+7)\)
としても和は求まります・・・
Σの使い方・まとめ
一回頭の中を整理しておきましょう。
\(\varSigma\)導入前に習った数列の和は
- 等差数列の和
- 等比数列の和
- べき乗の和
の \(3\) つです。
\(\varSigma\) を導入したことで、それらの表記を変えただけです。
で、\(\varSigma\) 表記を用いることで、スッキリと計算ができるようになったこととして、
「べき乗の和」の和や差の形になっているもの
なのです。
例
\(\displaystyle \sum_{ k = 1 }^{ n } (k^2+4k-1)\)\(=\displaystyle \sum_{ k = 1 }^{ n } k^2+4\displaystyle \sum_{ k = 1 }^{ n } k- \displaystyle \sum_{ k = 1 }^{ n } 1\)
あとはひたすら計算すればOKです。
ちなみに、等差数列の和は、\(1\) 乗と \(0\) 乗の和のミックスです。
今まで通りの公式でも求まりますが、\(\varSigma\) での計算にも慣れておきましょう。
結局 、\(\varSigma\) で特別な新しいことは何もないのです。
\(\varSigma\) 前の公式の表記が変わっただけ。それだけです。
難しく考えずに、計算練習をすればそれでOKです。