1の3乗根
1の3乗根 \(\omega\) (オメガ)
\(1\) の \(3\) 乗根とは、 \(3\) 乗して \(1\) になる数のことであり、つまり
\(x^3=1\)
という \(3\) 次方程式の解です。
この方程式の解は \(3\) つあります。
\(1\) と \(\displaystyle \frac{-1 \pm \sqrt{3}i}{2}\) です。
虚数の解が \(2\) つありますが、そのうちの \(1\) つを \(\omega\) (オメガと読む)とすると、
以下のことが成り立ちます。
\(\omega^2\) も\(1\) の \(3\) 乗根
※ちなみに、\(\omega^2\) は、\(\omega\) としなかったもう \(1\) つの虚数解です。
つまり、\(1\) の \(3\) 乗根は、\(1\) と \(\omega\) と \(\omega^2\) の \(3\) つ。
この \(3\) つの和は \(0\) になります。
\(\omega^2+\omega+1=0\)
上の性質は、\(2\) つの虚数解の、どちらを \(\omega\) としても成り立ちます。
※数学Ⅲで、複素数平面を学習することでいろいろ納得されると思います。
以上のことから成り立つ性質として、以下のことが重要です。
\(\omega^{3k}=(\omega^3)^k=1^k=1\)
\(\omega^{3k+1}=\omega^{3k} \cdot \omega=\omega\)
\(\omega^{3k+2}=\omega^{3k} \cdot \omega^2=\omega^2\)
この性質を用いて、\(\omega^k\) の次数を下げることができます。
例えば
\(\omega^{100}=\omega^{99} \cdot \omega=(\omega^3)^{33} \cdot \omega=\omega\)
例題1
\(x^3=1\) の虚数解の \(1\) つを \(\omega\) とするとき、次の式の値を求めなさい。
(1)\(\omega^{10}+\omega^8\)
(2)\((1+\omega-\omega^2)(1-\omega+\omega^2)\)
(3)\((1+\omega)(1+\omega^2)(1-\omega^4)(1-\omega^5)\)
解説
(1)\(\omega^{10}+\omega^8\)
\(\omega^3=1\) なので、
\(\omega^{10}=\omega^9 \cdot \omega=(\omega^3)^3 \cdot \omega=\omega\)
\(\omega^8=\omega^6 \cdot \omega^2=(\omega^3)^2 \cdot \omega^2=\omega^2\)
したがって、
\(\omega^{10}+\omega^8=\omega+\omega^2\)
\(=(\omega^2+\omega+1)-1\)
\(=-1\)
※ \(\omega^2+\omega+1=0\) を用いました。
(2)\((1+\omega-\omega^2)(1-\omega+\omega^2)\)
\(\omega^2+\omega+1=0\) なので、 \(\omega^2=-\omega-1\)
これを与式に代入すると、
\((1+\omega-\omega^2)(1-\omega+\omega^2)\)
\(=\{1+\omega-(-\omega-1)\}\{1-\omega+(-\omega-1)\}\)
\(=(1+\omega+\omega+1)(1-\omega-\omega-1)\)
\(=2(1+\omega)(-2\omega)\)
\(=-4(\omega+\omega^2)\)
\(=-4(\omega+\omega^2+1-1)\)
\(=-4×(-1)\)
\(=4\)
(3)\((1+\omega)(1+\omega^2)(1-\omega^4)(1-\omega^5)\)
\((1+\omega)(1+\omega^2)(1-\omega^4)(1-\omega^5)\)
\(=(1+\omega)(1+\omega^2)(1-\omega^3\cdot \omega)(1-\omega^3\cdot \omega^2)\)
\(=(1+\omega)(1+\omega^2)(1-\omega)(1-\omega^2)\)
\(=(1+\omega)(1-\omega)×(1+\omega^2)(1-\omega^2)\)
\(=(1-\omega^2)(1-\omega^4)\)
\(=(1-\omega^2)(1-\omega)\)
\(=(1-\omega-\omega^2+\omega^3)\)
\(=(1-\omega-\omega^2+1)\)
\(=(2-\omega-\omega^2)\)
\(=\{2-(\omega+\omega^2)\}\)
\(=\{2-(-1)\}\)
\(=3\)
オメガに関する考察
オメガの値
方程式、\(x^3=1\) を解いてみましょう。
\(x^3=1\)
\(x^3-1=0\)
因数分解の公式を適用して、
\((x-1)(x^2+x+1)=0\)
したがって、
\(x-1=0\) または、
\(x^2+x+1=0\)
\(x-1=0\) のとき、 \(x=1\)
\(x^2+x+1=0\) のとき、
\(x^2+x+1=0\) に解の公式を用いて、
\(x=\displaystyle \frac{-1 \pm \sqrt{1^2-4\cdot1\cdot1}}{2}\)
\(\displaystyle \frac{-1 \pm \sqrt{3}i}{2}\)
以上より、\(x^3=1\) を満たす \(x\) は
\(1,\displaystyle \frac{-1 \pm \sqrt{3}i}{2}\) です。
オメガの公式の確認
虚数の解が \(2\) つありますが、そのうちの \(1\) つを \(\omega\) とすると、
\(\omega^2\) も\(1\) の \(3\) 乗根
※ちなみに、\(\omega^2\) は、\(\omega\) としなかったもう \(1\) つの虚数解です。
\(\omega^2+\omega+1=0\)
が成り立ちます。
これらが確かに成り立つことを確かめておきましょう。
\(\omega^2\) も\(1\) の \(3\) 乗根
結局 \(\omega\) は \(\displaystyle \frac{-1 +\sqrt{3}i}{2}\) でも、\(\displaystyle \frac{-1 -\sqrt{3}i}{2}\) でも、どちらでも良いということなのですが・・・
確かめておきましょう。
\(\omega=\displaystyle \frac{-1 +\sqrt{3}i}{2}\) とすると、
\(\omega^2=(\displaystyle \frac{-1 +\sqrt{3}i}{2})^2\)
\(= \displaystyle \frac{1 -2\sqrt{3}i-3}{4}\)
\(= \displaystyle \frac{-2 -2\sqrt{3}i}{4}\)
\(= \displaystyle \frac{-1 -\sqrt{3}i}{2}\)
確かに、\(\omega^2\) は、\(\omega\) としなかったもう \(1\) つの虚数解です。
では、
\(\omega=\displaystyle \frac{-1 -\sqrt{3}i}{2}\) とすると、
\(\omega^2=(\displaystyle \frac{-1 -\sqrt{3}i}{2})^2\)
\(= \displaystyle \frac{1 +2\sqrt{3}i-3}{4}\)
\(= \displaystyle \frac{-2 +2\sqrt{3}i}{4}\)
\(= \displaystyle \frac{-1 +\sqrt{3}i}{2}\)
こちらも、\(\omega^2\) は、\(\omega\) としなかったもう \(1\) つの虚数解です。
\(\omega^2+\omega+1=0\)
実際に計算して見るとすぐにわかります。
\(\displaystyle \frac{-1 +\sqrt{3}i}{2}+\displaystyle \frac{-1 -\sqrt{3}i}{2}+1=0\)