正弦定理と余弦定理の使い分け・その3

正弦定理と余弦定理を大解剖!!

正弦定理と余弦定理の使い分けについて徹底的に解剖して見てみましょう。
もちろん、外接円の話がでてくれば「正弦定理」なので、それはここでは議論しません。

普通の高校生はここまで研究しなくて良いと思いますが、興味がある人はぜひ。

正弦定理を利用するのはどんなときなのか。

正弦定理
\(\displaystyle \frac{a}{\sin A}=\displaystyle \frac{b}{\sin B}\)

\(a,b, A, B\) のうち \(3\) つがわかれば、最後の \(1\) つが計算できるのが正弦定理です。
角は両方とも有名角でない限り計算ができません。
つまり、両方とも有名角であるようなものしか出題されません。

1.長さ \(1\) つ 角 \(2\) つ

\(a,A,B\) が与えらたとき。

\(2\) つの角が与えられたならば、最後の \(1\) つの角の大きさもわかります。
つまり、\(a,A,B,C\) が与えらえたのと同じことです。

このケースは、正弦定理でしか解けません。
余弦定理は適用できません。
余弦定理では、角の情報は \(1\) つだけしか使えません。

中学数学で学習したとおりですが、\(1\) 辺とその両端の角が決まれば、
三角形はただ \(1\) つに定まります。
ですので、このタイプの出題で、答えが複数になることはありません。

2.長さ \(2\) つ、角 \(1\) つ

\(a,b,A\) が与えらたとき。
ここから正弦定理で、角 \(B\) を求めることができます。
もちろん、\(A\) も \(B\) も有名角でないと計算不能です。

しかし、
\(A\) は有名角だが、\(B\) はそうではない!!というタイプも出題されるのです。
そのようなときは「余弦定理」で解くことになります。
このとき、

\(a^2=b^2+c^2-2bc \cos A\)

で \(c\) の \(2\) 次方程式になります。

余弦定理を利用するのはどんなときなのか。

余弦定理
\(a^2=b^2+c^2-2bc \cos A\)

\(a,b,c,A\) のうち \(3\) つがわかれば、最後の \(1\) つが計算できるのが余弦定理です。
\(A\) はもちろん有名角です。
そうでないと計算不能なので、出題されません。

1. \(3\) 辺の長さが与えられる

\(a,b,c\) が与えらたとき。
余弦定理のみ可能です。
\(3\) 辺から角を求めます。
問題で求めよ、と言っている角の対辺からはじめます。

求めよ、と出題される角は有名角です。そうでないと計算不能です。
※ \(A,B\) は有名角で \(C\) は無名角の三角形で
\(C\) を求めさせる意地悪問題も出題可能ではあります。
その場合は、まずは余弦定理で \(A\) を求めて、
次に正弦定理か余弦定理で \(B\) を求めます。最後に\(180°-A-B=C\) と求めます。

中学数学で学習したとおりですが、
\(3\) 辺が決まれば、三角形はただ \(1\) つに定まります。
ですので、このタイプの出題で、答えが複数になることはありません。

2.\(2\) 辺と \(1\) つの角が与えられる

どの \(2\) 辺が与えられるのかで場合分けすると、
ア \(a,b,A\)    
イ  \(b,c,A\)
ウ \(a,c,A\)     
の \(3\) パターンですね。
イは \(2\) 辺とその間の角が与えらたことになります。
アとウは \(2\) 辺とその間でない角が与えられていて、実質同じです。
ですから、イとアの \(2\) パターンです。

イ  \(b,c,A\) \(2\) 辺とその間の角

余弦定理のみ可能です。\(a\) からはじまる式で、\(a\) を求めることになります。
中学数学で学習したとおりですが、\(2\) 辺とその間の角が決まれば、三角形はただ \(1\) つに定まります。
ですので、このタイプの出題で、答えが複数になることはありません。

アとウ \(a,b,A\) \(2\) 辺とその間でない角

与えられた角 \(A\) の対辺 \(a\) からはじまる式を用います。

\(a^2=b^2+c^2-2bc \cos A\)
なので、\(c\) についての \(2\) 次方程式になります。
\(2\) 次方程式ですから、\(c\) の候補が \(2\) つになることもあります。
中学数学で学習したとおりですが、\(2\) 辺とその間でない角が決まっても、三角形はただ\(1\) つに定まりません。ですので、このタイプの出題で、答えが複数になることは当然ありうることですね。納得です。

注意してほしいのは、このタイプは正弦定理での立式の可能です。
そのときは、
\(B\) が有名角ならそれで解決。
\(B\) が無名角なら、やはり余弦定理を使うしかない!

ということです。

正弦定理と余弦定理の使い分け方法

以上をふまえて、正弦定理と余弦定理の使い分け方法を提示しました。

「正弦定理」と「余弦定理」の使い分けのポイント

向かい合う角と辺があれば、正弦定理を使う。
それ以外なら余弦定理を使う


高校数学無料学習サイトko-su- 三角比 正弦定理と余弦定理 使い分けフローチャート

ちなみに、絶対にやり直しをする必要のない方法もあるにはあります。

おススメ案2

\(2\) つの角がすでに与えられていれば、正弦定理。
※ちなみにこのときは三角形の図が容易にかけます。

それ以外ならば余弦定理を使う

この方法のメリットは、やりなおしの必要がないことです。
ただしデメリットは、「正弦定理で楽に解ける問題を、余弦定理で面倒に解く」可能性あります。
下の例で見てみましょう。

おススメ案2のデメリットを体感する

\(a=3+\sqrt{3} , b =2+2\sqrt{3},A=60°\) のとき、\(c\) を求めなさい。

正弦定理で解く

従来のおススメ案でこの問題を解くならば、向いあう角と辺が与えられているから正弦定理です。

\(\displaystyle \frac{a}{\sin A}=\displaystyle \frac{b}{\sin B}\)

\(\displaystyle \frac{3+\sqrt{3} }{\sin 60°}=\displaystyle \frac{2+2\sqrt{3}}{\sin B}\)

\(\sin B=1\)
より\(B=90°\)

\(30°,60°,90°\) の有名三角形なので、図示すれば解決します。
※正弦定理でもよいです。

\(c=1+\sqrt{3}\) です。

余弦定理で解く

この問題をおススメ案2に従って、
 \(2\) つの角が与えられていないからという理由で余弦定理を用いると・・・

\(a^2=b^2+c^2-2bc \cos A\) に代入して、

\((3+\sqrt{3})^2=(2+2\sqrt{3})^2+c^2-2(2+2\sqrt{3})c×\displaystyle \frac{1}{2}\)

この \(2\) 次方程式を解くのはやや苦しいですね・・・

ちょっと極端な例を出しましたが、余弦定理よりも正弦定理の方が楽なのは間違いありません。

ところで、なんのデメリットもないおススメ方法はないですか?
やり直しすることもなく、正弦定理で楽に解ける問題を、余弦定理でやることもない、そんな方法はありますか?

という質問に対する答えは、「ない」となります。

結局、\(2\) 辺と \(1\) つの角が与えられたタイプで、正弦定理が使用可能かどうかは、
求めるべき角が有名角が無名角かで決まるので、これは計算をしてみてはじめてわかります。

明らかに有名角の値が出てこなそうなら、はじめから余弦定理を使ってしまうのはありでしょう。これができれば一番ロスがないですが、そこまでがんばらなくてもいいのかな、と思います。めちゃくちゃ慣れてきたらこのレベルを目指してもいいかもしれませんね。