数学的帰納法1
数学的帰納法
自然数 n を含んだ命題 P(n) が、すべての自然数 n について成り立つことを証明する方法として「数学的帰納法」がある。
1.n=1 のとき、P(1) が成り立つことを示す。
2.n=k のとき、P(k)が成り立つと仮定し、
n=k+1 のとき、P(k+1) が成り立つことを示す。
1.2より、すべての自然数 n について、命題 P(n) が成り立つ。
上のような論法を数学的帰納法といいます。
よく用いられる例えとして、ドミノ倒しがあります。
「n=1 のとき、P(1) が成り立つ」とは、ドミノ倒しのスタートを倒したようなものです。
そして、「n=k のとき P(k) が成り立つならば、n=k+1 のとき P(k+1) が成り立つ」とは、ドミノが次々と倒れていくことの保証です。
n=1 で倒れたので、n=2 も倒れます。
n=2 で倒れたので、n=3 も倒れます。
n=3 で倒れたので、n=4 も倒れます。
以下永久にこの論理は続くので、すべての自然数 n についてドミノが倒れます。
例題1
n を自然数とするとき、次の等式を証明しなさい。
12+22+32+⋯+n2=16n(n+1)(2n+1)
解説
2 乗の和の公式ですね。この公式がすべての自然数で成立することの証明です。
「すべての自然数で成立する」を証明するのは、数学的帰納法の出番です。
では行きましょう。
この等式を①とする。
1.n=1 のとき
(左辺)=1、(右辺)=16⋅1⋅2⋅3=1
よって、①は成り立つ。
2.n=k のとき①が成り立つと仮定すると、
12+22+32+⋯+k2=16k(k+1)(2k+1)・・・②
もし成り立つのならば、②の等式が成り立つよね、という意味です。
そして、②が成り立つという仮定のもと、n=k+1 のときに①式が成立することを示すことが目標です。
②式の両辺に (k+1)2 を足すと、
12+22+32+⋯+k2+(k+1)2=16k(k+1)(2k+1)+(k+1)2
16(k+1){(k+1)+1}{2(k+1)+1}
にもっていくことが目標です。これは、n=k+1 のときの①式です。
16k(k+1)(2k+1)+(k+1)2
=16(k+1){k(2k+1)+6(k+1)}
=16(k+1)(2k2+7k+6)
=16(k+1)(k+2)(2k+3)
=16(k+1){(k+1)+1}{2(k+1)+1}
したがって、n=k+1 のときも①は成り立つ。
1.2より、すべての自然数 n について、①が成り立つ。
公式の導出はできない
そもそも①式、12+22+32+⋯+n2=16n(n+1)(2n+1) はどうやって作られた式なのかは、この方法ではわかりません。
ただし、試行錯誤の末に①式が成り立つらしいぞ・・・と見つけたとして、
あらゆる n に使える公式として正しいだろうか?
という疑問を解消するために、この数学的帰納法は用いられます。
例題2
n を自然数とするとき、次の等式を証明しなさい。
12+32+52+⋯+(2n−1)2=13n(2n−1)(2n+1)
解説
この等式を①とする。
1.n=1 のとき
(左辺)=1、(右辺)=13⋅1⋅(2⋅1−1)(2⋅1+1)=1
よって、①は成り立つ。
2.n=k のとき①が成り立つと仮定すると、
12+32+52+⋯+(2n−1)2=13k(2k−1)(2k+1)・・・②
より、
12+32+⋯+(2k−1)2+{2(k+1)−1}2=13k(2k−1)(2k+1)+{2(k+1)−1}2
=13(2k+1){k(2k−1)+3(2k+1)}
=13(2k+1)(2k2−k+6k+3)
=13(2k+1)(2k2+5k+3)
=13(2k+1)(2k+3)(k+1)
=13(k+1){2(k+1)−1}{2(k+1)+1}
したがって、n=k+1 のときも①は成り立つ。
1.2より、すべての自然数 n について、①が成り立つ。