不等式の証明2 絶対不等式
絶対不等式
何の条件もついていない不等式、
つまり、どんなときでも成り立つ不等式を「絶対不等式」といいます。
このような問題も、\(A \gt B\) の証明は、\(A-B \gt 0\) を示します。
そして \(A-B\) が \(0\) 以上であることを示すためには、以下の性質がよく
用いられます。
\(a=0\) のときに等号成立。
実数 \(a,b\) について、\(a^2+b^2 \geqq 0\)
\(a=b=0\) のときに等号成立。
あとはこれらに派生して、
\(a^2+正の数 \gt 0\)
など、自明と思えることを用います。
例題1
次の不等式を証明しなさい。
\(a^2+10 \gt 6a\)
解説
(左辺)\(-\)(右辺)\(=a^2+10-6a\)
\(=(a+3)^2-9+10\)
\(=(a+3)^2+1 \gt 0\)
より、\(a^2+10 \gt 6a\) が成り立つ。
これで証明終了です。
つまりは、平方完成です。
不等式に\(2\) 乗の項がある場合、平方完成によって0より大を示す、
これが定番パターンです。しっかり覚えましょう。
例題2
次の不等式を証明しなさい。
\(x^2+y^2 \geqq 2(x+y-1)\)
解説
(左辺)\(-\)(右辺)\(\geqq 0\) を示しましょう。
(左辺)\(-\)(右辺)
\(=x^2+y^2-2(x+y-1)\)
この後の式変形は初見では戸惑うでしょうが、とにかくやり方を覚えてしまいましょう。
\(x\) について降べきの順に整理します。
(左辺)\(-\)(右辺)
\(=x^2-2x+(y^2-2y+2)\)
\(x\) について平方完成します。
\(x^2-2x+(y^2-2y+2)\)
\(=(x-1)^2-1+(y^2-2y+2)\)
\(=(x-1)^2+y^2-2y+1\)
すると、\(y\) でも平方完成ができますね。
\((x-1)^2+y^2-2y+1\)
\(=(x-1)^2+(y-1)^2 \geqq 0 \)
より、\(x^2+y^2 \geqq 2(x+y-1)\) が成り立つ。
等号成立は \(x=y=1\) のとき
これで証明終了です。
例題3
次の不等式を証明しなさい。
\(x^2+7y^2 \geqq 5xy\)
解説
(左辺)\(-\)(右辺)
\(=x^2+7y^2 -5xy\)
\((x+ay)^2\) の形に平方完成できそうです。
\(x^2+7y^2 -5xy\)
\(=(x-\displaystyle \frac{5}{2}y)^2-\displaystyle \frac{25}{4}y^2+7y^2\)
\(=(x-\displaystyle \frac{5}{2}y)^2+\displaystyle \frac{3}{4}y^2 \geqq 0\)
より、\(x^2+7y^2 \geqq 5xy\) が成り立つ。
等号成立は \(x=y=0\) のとき
例題4
次の不等式を証明しなさい。
\(x^2+2xy+2y^2+2x-4y+10\geqq 0\)
解説
初見ではなかなか難しく見えますね。
でも、「平方完成」で解決するはず、という解法知識ありきです。
他に策もないのですから、「平方完成」していきます。
(左辺)\(=x^2+2(y+1)x+2y^2-4y+10\)
\(=\{x+(y+1)\}^2-(y+1)^2+2y^2-4y+10\)
\(=\{x+(y+1)\}^2-(y^2+2y+1)+2y^2-4y+10\)
\(=\{x+(y+1)\}^2-y^2-2y-1+2y^2-4y+10\)
\(=\{x+(y+1)\}^2+y^2-6y+9\)
\(=(x+y+1)^2+(y-3)^2\geqq 0\)
より、\(x^2+2xy+2y^2+2x-4y+10\geqq 0\) が成り立つ。
等号成立は
\(x+y+1=0\) かつ
\(y-3=0\)
つまり、\(x=-4,y=3\) のとき