負の数の平方根

\(2\) 次方程式が解けないとき・さらなる広い世界へ

中学校で学習した \(2\) 次方程式ですが、
実は中学校では、そのすべてを学習したわけではありません。
\(2\) 次方程式の一部だけを学習したのです。

どのような \(2\) 次方程式を学習したのかというと、
「解くことができるもの」だけ学習したのです。

ですから、「解くことのできない \(2\) 次方程式」があるということです。

具体的には
\(x^2=-1\)
です。
正の数も負の数も、\(2\) 乗すると正の数になるのですから、
\(x^2=-1\)
を満たす \(x\) は存在しないわけです。

別の書き方をすると、
\(x^2=t\) の解は、
\(x=\pm\sqrt{t}\)
なので、
\(x^2=-1\) の解は、
\(x=\pm\sqrt{-1}\)
根号の中が負の数であることはないので、解なし。
中学数学ではこのように扱っていました。

他にも、
\(x^2-2x+3=0\)
も解くことができません。
解の公式より
\(x=\displaystyle \frac{-(-2)\pm \sqrt{(-2)^2-4×1×3}}{2×1}\)

\(x=\displaystyle \frac{2\pm \sqrt{-8}}{2}\)

根号の中が負の数になりますね。
根号の中が負の数などありえないので、これは解けないのです。
※そもそも中学生にはこのような \(2\) 次方程式は目に触れないようになっていたかもしれません。
解けない方程式があるなんて目から鱗!
はじめて見たって人もいることでしょう。

種明かしをすれば、中学数学では、
「実数の範囲で解くことができる \(2\) 次方程式」のみを学習したのです。

こう言われれば、
実数の範囲外、「根号の中が負の数とはいったい何なのか」について興味がわいてきますね!?

虚数・数の世界を拡張する

解けない、と言っていないで解けるようにしてみよう、というのが数学の世界の発展の一端を担っています。

\(\sqrt{-1}\) なんて数はない、
ではなくて、
\(\sqrt{-1}\)
という数を一回認めてみるのです。
その結果、どんな世界が広がっていくのかを調べてみるのです。
これを「数の世界の拡張」といいます。

その拡張をしてみたけれど、ぜんぜんうまくいかない、矛盾が起きてしまう!
そのようなこともあるでしょう。
そのような場合、不自然で無理な拡張だった、ということです。
きっぱりと捨てさります。

逆に、拡張によって思いがけない美しい世界に出会えることもあるのです。

小学生のとき、整数の世界から、小数、分数の世界へと拡張をしました。
中学生になり、\(4\) から \(7\) を引くために、負の数の世界への拡張をしました。
\(x^2=2\) の解として、分数で表せない数の世界、\(\sqrt{2}\) という数も導入しました。
今回は、\(x^2=-1\) の解です。
そんなものはない!ではなくて、
\(\sqrt{-1}\) という数があるとしたら・・・
このような世界を考えてみましょう。

すると、
先に書いた通りの、矛盾のない美しい世界の広がりが待っているのです。
また、実際にこの社会の科学技術を支える基礎にもなっています。

\(\sqrt{-1}\) を含む数の世界を考えることで、現代の多くの科学技術が発展しました。
パソコンも携帯電話も、\(\sqrt{-1}\) の世界の言葉で設計、記述されていて、我々人類は、それを制御できているのです。

\(\sqrt{-1}\) を足したり、割ったりする世界へ

先の \(2\) 次方程式
\(x^2-2x+3=0\)
ですが、
解の公式より
\(x=\displaystyle \frac{2\pm \sqrt{-8}}{2}\)

ここまで計算しました。
つまり、

\(x=1\pm \displaystyle \frac{\sqrt{-8}}{2}\)
です。
このことから、
\(\sqrt{-1}\) を認める世界には、\(\sqrt{-8}\) や \(\displaystyle \frac{\sqrt{-8}}{2}\) もあり、
さらに
実数との和、差である
\(1\pm \displaystyle \frac{\sqrt{-8}}{2}\)
もあることがわかります。

次からは、この負の数の平方根を認めた世界について学習してきます。