【センター試験ⅡB】三角関数

センター試験・過去問研究

センター試験の過去問を徹底解説します。
センター試験とはどれくらいのレベルの問題が出るのか、どのような出題があるのか、まずは経験値をつみましょう!

平成 \(30\) 年度の大問1の【1】です。

弧度法とは何か、という公式や定義そのものを問う問題です。
ただの解法知識だけを覚えてきた受験生を振るい落とすための一問であり、今後の思考力重視へと向かうセンター試験の時代の流れを象徴する一問と言えます。

【1】
(1) \(1\) ラジアンとは、\(ア\) のことである。\(ア\) に当てはまるものを、次の\(0\) ~\(3\) のうちから一つ選べ。

\(0\) 半径が \(1\)、面積が \(1\) の扇形の中心角の大きさ
\(1\) 半径が \(\pi\)、面積が \(1\) の扇形の中心角の大きさ
\(2\) 半径が \(1\)、弧の長さが \(1\) の扇形の中心角の大きさ
\(3\) 半径が \(\pi\)、弧の長さが \(1\) の扇形の中心角の大きさ

(2)\(144°\) を弧度で表すと \(\displaystyle \frac{イ}{ウ} \pi\) ラジアンである。また、 \(\displaystyle \frac{23}{12} \pi\) ラジアンを度で表すと \(エオカ°\) である。

筆者注(3)へと続く

解説

\(1\) ラジアンについて完全に暗記している人は少ないでしょう。

知っていることから導きます。

\(\pi\) ラジアンが \(180°\) であることを暗記してない人はいませんね?

\(\pi\) ラジアン \(=180°\) ですから、

\(1\) ラジアン \(=\displaystyle \frac{180}{\pi} °\) です。

あとは、選択肢にある面積や、弧の長さを求めて、適切なものを選びます。

例えば、選択肢 \(0\) が正しいかどうか調べると、半径が \(1\)、面積が \(1\) の扇形の中心角の大きさを \(x°\) とすると、

\(1^2×\pi×\displaystyle \frac{x}{360} =1\)

より、\(x=\displaystyle \frac{360}{\pi} °\)

よって、これではないことがわかります。

順に調べれば見つかりますが、ある程度カンが働いて欲しいですね。
半径が \(\pi\) なんておかしいって思って欲しいです。普通に数学に触れてきた人ならば。

答えは、選択肢 \(2\) です。

「半径が \(1\)、弧の長さが \(1\) の扇形の中心角の大きさ」が \(1\) ラジアンです。

ア=2

では続きです。

(2)\(144°\) を弧度で表すと \(\displaystyle \frac{イ}{ウ} \pi\) ラジアンである。また、 \(\displaystyle \frac{23}{12} \pi\) ラジアンを度で表すと \(エオカ°\) である。

これはサービス問題です。
弧度法を習ってすぐに練習する基本中の基本ですね。

\(\pi\) ラジアン \(=180°\) を暗記していれば、両辺を \(\displaystyle \frac{144}{180}\) 倍するだけです。

\(\pi\) ラジアン \(×\displaystyle \frac{144}{180}=144°\)

より、 \(\displaystyle \frac{4}{5} \pi\) ラジアン \(=144°\)

イ=4、ウ=5

また、\(\pi\) ラジアン \(=180°\) の両辺を \(\displaystyle \frac{23}{12}\) 倍すれば、

\(\displaystyle \frac{23}{12}\pi\) ラジアン \(=180°×\displaystyle \frac{23}{12}\)

\(180°×\displaystyle \frac{23}{12}=345°\) なので、

エオカ=345

では後半です。

(3) \(\displaystyle \frac{\pi}{2} \leqq \theta \leqq \pi\) の範囲で、

\(2 \sin (\theta +\displaystyle \frac{\pi}{5})-2 \cos (\theta +\displaystyle \frac{\pi}{30})=1\)・・・①

を満たす \(\theta\) の値を求めよう。

\(x=\theta +\displaystyle \frac{\pi}{5}\) とおくと、①は

\(2 \sin x-2 \cos (x-\displaystyle \frac{\pi}{キ})=1\)

と表せる。加法定理を用いると、この式は

\(\sin x-\sqrt{ク} \cos x=1\)

となる。さらに、三角関数の合成を用いると

\(\sin (x-\displaystyle \frac{\pi}{ケ})=\displaystyle \frac{1}{コ}\)

と変形できる。\(x=\theta +\displaystyle \frac{\pi}{5}\) 、\(\displaystyle \frac{\pi}{2} \leqq \theta \leqq \pi\) だから、\(\theta=\displaystyle \frac{サシ}{スセ}\pi\) である。

筆者注 以上

解説

\(2 \sin (\theta +\displaystyle \frac{\pi}{5})-2 \cos (\theta +\displaystyle \frac{\pi}{30})=1\)・・・①

\(x=\theta +\displaystyle \frac{\pi}{5}\) とおくと、①は

\(2 \sin x-2 \cos (x-\displaystyle \frac{\pi}{キ})=1\)

これはめちゃくちゃ簡単ですね!

\(\cos\) の角の大きさを変形するだけです。

つまり、

\(\theta +\displaystyle \frac{\pi}{30}=\underbrace{\theta +\displaystyle \frac{\pi}{5}}_{ x }-\displaystyle \frac{\pi}{キ}\)

より、\(\displaystyle \frac{\pi}{キ}=\displaystyle \frac{\pi}{6}\)

キ=6

加法定理を用いると、この式は

\(\sin x-\sqrt{ク} \cos x=1\)

となる。

この式とは、キ=6を求めた

\(2 \sin x-2 \cos (x-\displaystyle \frac{\pi}{6})=1\) ですから、問題文の言うとおり加法定理を用いてみます。

加法定理を用いる箇所は、\(\cos (x-\displaystyle \frac{\pi}{6})\) しかありませんね。
ここはただの計算なので、解説を見ないで自力で解決できないといけませんよ!

\(\cos (x-\displaystyle \frac{\pi}{6})=\cos x \cdot \cos \displaystyle \frac{\pi}{6} +\sin x\cdot \sin\displaystyle \frac{\pi}{6}\)

\(= \displaystyle \frac{\sqrt{3}}{2} \cos x+\displaystyle \frac{1}{2}\sin x\)

よって、\(2 \sin x-2 \cos (x-\displaystyle \frac{\pi}{6})=1\) は

\(2 \sin x-2(\displaystyle \frac{\sqrt{3}}{2} \cos x+\displaystyle \frac{1}{2}\sin x)=1\)

整理すると、

\(\sin x-\sqrt{3} \cos x=1\)

より、ク=3

さらに、三角関数の合成を用いると

\(\sin (x-\displaystyle \frac{\pi}{ケ})=\displaystyle \frac{1}{コ}\)

と変形できる。\(x=\theta +\displaystyle \frac{\pi}{5}\) 、\(\displaystyle \frac{\pi}{2} \leqq \theta \leqq \pi\) だから、\(\theta=\displaystyle \frac{サシ}{スセ}\pi\) である。

ク=3と求まった式に、三角関数の合成を用いなさい、と問題文が誘導していますので、その通りに式変形をするだけです。
\(\sin x-\sqrt{3} \cos x=1\)

\(\sin (x-\displaystyle \frac{\pi}{ケ})=\displaystyle \frac{1}{コ}\)

の形に向かって合成します。

合成と加法定理は互いに逆操作の関係です。加法定理でバラバラにする方が楽なので、加法定理を使いましょう。

\(\sin (x-\displaystyle \frac{\pi}{ケ})=\displaystyle \frac{1}{コ}\) の両辺を \(コ\) 倍します。

\(コ\sin (x-\displaystyle \frac{\pi}{ケ})=1\)

この式を加法定理でバラすと、

\(コ\sin x \cos \displaystyle \frac{\pi}{ケ}-コ\sin \displaystyle \frac{\pi}{ケ} \cos x=1\)

これと、\(\sin x-\sqrt{3} \cos x=1\) が同じ式になるので、それぞれの式の係数を比較します。

\(コ\cos \displaystyle \frac{\pi}{ケ}=1\)

\(コ\sin \displaystyle \frac{\pi}{ケ}=\sqrt{3}\)

これを満たすのは、
\(2\cos \displaystyle \frac{\pi}{3}=1\)

\(2\sin \displaystyle \frac{\pi}{3}=\sqrt{3}\)

より、ケ=3、コ=2

つまり、
\(\sin (x-\displaystyle \frac{\pi}{3})=\displaystyle \frac{1}{2}\)

なので、\(n\) を整数として、
\(x-\displaystyle \frac{\pi}{3}=\displaystyle \frac{\pi}{6}+2n \pi\) あるいは、\(\displaystyle \frac{5}{6}\pi+2n \pi\)

より、\(x=\displaystyle \frac{\pi}{2}+2n \pi\) あるいは、\(\displaystyle \frac{7}{6}\pi+2n \pi\)

\(\theta =x-\displaystyle \frac{\pi}{5}\) なので、

\(\theta =\displaystyle \frac{\pi}{2}+2n \pi-\displaystyle \frac{\pi}{5}=\displaystyle \frac{3}{10}\pi+2n \pi\)
あるいは、
\(\theta =\displaystyle \frac{7}{6}\pi+2n \pi-\displaystyle \frac{\pi}{5}=\displaystyle \frac{29}{30}\pi+2n \pi\)

\(\displaystyle \frac{\pi}{2} \leqq \theta \leqq \pi\) の範囲なので、

\(\theta=\displaystyle \frac{29}{30}\pi\)

より、サシ=29、スセ=30