正弦定理と余弦定理の使い分け・その2
正弦定理と余弦定理の使い分け
正弦定理と余弦定理について、前ページから見てきました。
前ページの例題の(1)から(3)に続いて、
例題をあと \(2\) つ見ていきしましょう。
例題
次のような三角形 \(ABC\) において、指定されたものを求めなさい。
(4)\(a=3,b=5,c=7\) のとき、角 \(C\) を求めよ。
(5)\(b=\sqrt{6},c=2,B=60°\) のとき、長さ \(a\)、角 \(A,C\) を求めよ。
解説
(4)\(a=3,b=5,c=7\) のとき、角 \(C\) を求めよ。
向かい合う角と辺がありません。余弦定理で解きましょう。
余弦定理は、「分かっている角」か「求めたい角」のどちらかの向かいの辺からはじまる式を使います。
よって \(c^2\) からはじめます。
\(7^2=3^2+5^2-2×3×5 \cos C\)
これを解いて
\(\cos C=-\displaystyle \frac{1}{2}\)
よって、\(C=120°\)
この問題は正弦定理では解けません。
(5)\(b=\sqrt{6},c=2,B=60°\) のとき、長さ \(a\)、角 \(A,C\) を求めよ。
\(b\) と \(B\) 、向かいあう角と辺があるので、正弦定理が適用できます。
\(\displaystyle \frac{\sqrt{6}}{\sin 60°}=\displaystyle \frac{2}{\sin C}\)
より、\(\sin C= \displaystyle \frac{1}{\sqrt{2}}\)
よって、
\(C=45°,135°\)
\(135°\) は三角形の内角として不適なので、\(C=45°\) です。
つまり、残った角 \(A=75°\)
あとは \(a\) を求めますが、\(\sin 75°\) は求まらないため、正弦定理では出せません。
よって、余弦定理を使います。
もちろん、これで間違いではありませんが、
\(45°, 60°,75° \) の三角形は 図示が可能ですね。
\(a=1+\sqrt{3}\) と求まります。
ちなみに、この問題にはじめから余弦定理を使うと、
分かっている角 \(B\) なので、\(b\) からはじまる式です。
\((\sqrt{6})^2=2^2+a^2-2\cdot a\cdot2 \cos 60°\)
\(a^2-2a-2=0\)
この\(2\) 次方程式を解いて(やや面倒ですね)
\(a=1\pm \sqrt{3}\)
\(a \gt 0\) ですから
\(a=1 + \sqrt{3}\)
このあとは,\(b,c\) で正弦定理です。
結局、どちらを先に使っても、大きく解法に差がないとも言えます。
そういうタイプの問題もあるんです。しかし・・・それは結果論です。
正弦定理の方が余弦定理より計算が楽なのは間違いありません。
正弦定理を使えるときはます正弦定理を使いましょう。
上で見たように図示をすることで、余弦定理からの \(2\) 次方程式を解かなくて済むこともありますから。
正弦定理と余弦定理の使い分けのまとめ
三角形の決定問題での最大のポイントは、正弦定理と余弦定理のどっちを使うべきか、という点です。
ちなみに以下のようなパターンあります。
1.正弦定理しか使えない問題
※\(2\) つの角(有名角)と \(1\) 辺から他の辺を求めるタイプ
2.余弦定理しか使えない問題
※ \(3\) つの辺から有名角を求めるタイプ
※ \(2\) 辺とその間の角(有名角)から他の辺や角を求めるタイプ
※ \(2\) 辺とその間でない \(1\) つの有名角から他の辺を求めるタイプ(他\(2\) つは無名角)
3.どちらも使える問題(それなら正弦定理の方が楽だけど・・・)
※\(2\) 辺とその間でない \(1\) つの有名角からもう \(1\) つの有名角を求めるタイプ
これらをいかにして見抜くかということなんです。
これらを踏まえて、以下のような使い分け案を提示しました。
向かい合う角と辺があれば、正弦定理を使う。
それ以外なら余弦定理を使う。
もし興味があれば、さらに詳しく解析したものを、その \(3\) に載せます。教師、講師の人向けかなと思います。