なぜ定積分で面積が求まるのか
そもそも、なぜ定積分をすると面積が求まるのでしょうか?
また、定積分の意味するところは何なのでしょうか?
つまり、
\(y=f(x)\)
\(x=a\)
\(x=b\)
\(x\) 軸
で囲まれた面積 \(S\) は
\(S=F(b)-F(a)\) ですが、
一体この計算は何なのでしょうか?
これについて見ていきましょう。
定積分とは何か。なぜ面積が求まるのか。
\(y=f(t)\)
\(t=a\)
\(t=x\)
\(t\) 軸
で囲まれた部分の面積を \(S_{ a }(x)\) とします。
\(a\) は定数で、\(x\) は変数です。
\(a\) と \(x=8\) に囲まれた面積は \(S_{ a }(8)\)
\(a\) と \(x=20\) に囲まれた面積は \(S_{ a }(20)\)
つまり、 \(S_{ a }(x)\) は 、\(x\) の値によって面積の値が \(1\) つ定まる \(x\) の関数です。
注1 \(y=f(t)\) 、\(t\) 軸、と \(x\) ではなく \(t\) を用いて議論していますが、本質は何も変わらないですね。
例えば、\(y=x^2+2x+3\) のグラフに囲まれた面積と、\(y=t^2+2t+3\) のグラフに囲まれた面積は違いがありません。
注2 \(S_{ a }(x)\) は \(x\) の面積の関数ですが、もしこの関数を可視化したいと思ったら上の図のような面積による図示ではいけません。上の図は、 \(x\) がある定数のときの図を代表してかいただけのものです。\(x=10\) のとき、\(x=20\) のとき、\(x=30\) のとき・・・あらゆる \(x\) における \(S_{ a }(x)\) を面積による図示はできません。可視化するならば、\(y=S_{ a }(x)\) として曲線のグラフとします。
次に、ごく小さい値 \(h\) だけずらします。
すると、
\(y=f(t)\)
\(t=a\)
\(t=x+h\)
\(t\) 軸
で囲まれた部分の面積は \(S_{ a }(x+h)\) です。
そして、下図の 濃い赤色の部分の面積は
\(S_{ a }(x+h)-S_{ a }(x)\) となります。
この面積を、長方形の面積と大小比較します。
※もはや \(t=a\) は関係ないですね。
この面積 \(S_{ a }(x+h)-S_{ a }(x)\) は オレンジ色の長方形の面積 \(h×f(x)\) より大きく、
太い赤枠の長方形の面積 \(h×f(x+h)\) より小さいので、
\(hf(x) \lt S_{ a }(x+h)-S_{ a }(x) \lt hf(x+h)\)
\(h \gt 0\) で割って、
\(f(x) \lt \displaystyle \frac{S_{ a }(x+h)-S_{ a }(x)}{h} \lt f(x+h)\)
ここで、\(h\) を極限まで小さくします。
つまり、
\(f(x) \lt \displaystyle \lim_{ h \to 0 } \displaystyle \frac{S_{ a }(x+h)-S_{ a }(x)}{h} \lt\displaystyle \lim_{ h \to 0 } f(x+h)\)
となります。この不等式の最も右、
\(\displaystyle \lim_{ h \to 0 } f(x+h)=f(x)\) なので、
\(f(x) \lt \displaystyle \lim_{ h \to 0 } \displaystyle \frac{S_{ a }(x+h)-S_{ a }(x)}{h} \lt f(x)\)
つまり、
\( \displaystyle \lim_{ h \to 0 } \displaystyle \frac{S_{ a }(x+h)-S_{ a }(x)}{h} = f(x)\) です。
これを「はさみうちの原理」といいます。
※まあ、そんなものかな、という理解でOKです。
さて、左辺ですが、これは \(S_{ a }(x)\) の導関数 \(S’_{ a }(x)\) の定義式そのままです。
つまり、
\(S’_{ a }(x)=f(x)\)
ついに目標にほぼ到達しました。
面積の関数 \(S_{ a }(x)\) を微分すると、関数 \(f(x)\) になるという意味の式です。
もちろん \(f(x)\) の原始関数の \(1\) つが、面積の関数 \(S_{ a }(x)\) になるということです。
さらに、今までの議論において、\(t=a\) という設定は関係ありませんでした。
つまり、
\(f(x)\) の原始関数は、\(y=f(x)\) と \(x\) 軸と \(y\) 軸に平行な \(2\) 直線に囲まれた部分の面積と関連する
このことが確かめられました。
定積分をきちんと定める
\(f(x)\) の原始関数 \(F(x)+C\) は、積分定数 \(C\) の値によって無数にあります。
その中から 面積の関数 \(S_{ a }(x)\) と一致するものを定めてみましょう。
面積の関数 \(S_{ a }(x)\) の積分定数を求めるということです。
\(S’_{ a }(x)=f(x)\) より
\(S_{ a }(x)=F(x)+C\)
\(S_{ a }(a)=0\) なので、
※ \(a\) から \(a\) の範囲の面積は \(0\)
\(S_{ a }(a)=F(a)+C=0\)
したがって、\(C=-F(a)\)
つまり、
\(S_{ a }(x)=F(x)-F(a)\) です。
ですから、
\(y=f(x)\)
\(x=a\)
\(x=b\)
\(x\) 軸
で囲まれた面積 \(S_{ a }(b)\) は
\(S_{ a }(b)=F(b)-F(a)\) です。
以上、定積分の計算がなぜこのような形なのか、なぜ面積が求まるか、でした。
※\(t\) を \(x\) に戻しましたが、\(t\) のままでも構いません。