定積分の計算のコツ
\(\displaystyle \int_a^b f(x) dx = \left[ F(x) \right]_a^b = F(b)-F(a) \)
において、\(F(b)\) と \(F(a)\) をそれぞれ計算して求めるよりも、
同類項どうしをまとめて計算する方が圧倒的に楽である。
例
\(\displaystyle \int_p^q (ax^2+bx+c) dx \)
\(= \left[ \displaystyle \frac{a}{3}x^3+\displaystyle \frac{b}{2}x^2+cx \right]_p^q \)
\(= (\displaystyle \frac{a}{3}q^3+\displaystyle \frac{b}{2}q^2+cq) -(\displaystyle \frac{a}{3}p^3+\displaystyle \frac{b}{2}p^2+cp) \)
\(=\displaystyle \frac{a}{3}(q^3-p^3)+\displaystyle \frac{b}{2}(q^2-p^2)+c(q-p)\)
上↑のポイントですが、具体例で見ていきましょう。
例題として、前ページの例題 \(2\) を取り上げます。
例・前ページの例題2
次の定積分を求めなさい。
\(\displaystyle \int_{-1}^2 (2x^2-4x+1) dx \)
普通に計算する
まずは、普通の計算をおさらいしておきましょう。
\(\displaystyle \int_{-1}^2 (2x^2-4x+1) dx \)
\(= \left[ \displaystyle \frac{2}{3}x^3-2x^2+x \right]_{-1}^2\)
\( = \underbrace{ \{\displaystyle \frac{2}{3}\cdot2^3-2\cdot2^2+2\} }_{ F(2) }\)\(-\underbrace{ \{\displaystyle \frac{2}{3}\cdot(-1)^3-2\cdot(-1)^2+(-1)\} }_{ F(-1) }\)
\(=\underbrace{ -\displaystyle \frac{2}{3} }_{ F(2) }-\underbrace{ (-\displaystyle \frac{11}{3}) }_{ F(-1) }=3\)
以上求まりました。
より計算を楽にする方法を下で解説します。
同類項どうしを先に計算する
上↑の計算において、\(3\) 行目
\( \{\displaystyle \frac{2}{3}\cdot2^3-2\cdot2^2+2\}\)\(-\{\displaystyle \frac{2}{3}\cdot(-1)^3-2\cdot(-1)^2+(-1)\}\)
この計算がかなり面倒です。
ここは
\(F(2)=\displaystyle \frac{2}{3}\cdot2^3-2\cdot2^2+2\)
から
\(F(-1)=\displaystyle \frac{2}{3}\cdot(-1)^3-2\cdot(-1)^2+(-1)\)
を引くという計算です。
つまり、\(F(2)\) の \(3\) つの項を足して、\(F(-1)\) の \(3\) つの項を足して、
そして最後に互いを引いています。
この足し算引き算は、順序を変えて計算してもOKなのですから、似たもの同士を先にまとめて計算してしまうのが圧倒的に楽です。
\(F(2)=\)\(\displaystyle \frac{2}{3}\cdot2^3\)\(-2\cdot2^2\)\(+2\)
\(F(-1)=\)\(\displaystyle \frac{2}{3}\cdot(-1)^3\)\(-2\cdot(-1)^2\)\(+(-1)\)
つまり、同じ色どうしの引き算を先に行います。
\(F(2)-F(-1)\)
\(=\displaystyle \frac{2}{3}\cdot2^3-\displaystyle \frac{2}{3}\cdot(-1)^3\)
\(+\{-2\cdot2^2\}-\{-2\cdot(-1)^2\}\)
\(+2-(-1)\)
つまり、
\(\begin{eqnarray}\left[ \displaystyle \frac{2}{3}x^3-2x^2+x \right]_{-1}^2= &\hspace{ 9pt } & \displaystyle \frac{2}{3}\cdot2^3-\displaystyle \frac{2}{3}\cdot(-1)^3 \\ &+& \{-2\cdot2^2\}-\{-2\cdot(-1)^2\} \\ &+& 2-(-1) \end{eqnarray}\)
ということです。
これはもっとシンプルに以下のようになります。
\(\begin{eqnarray}\left[ \displaystyle \frac{2}{3}x^3-2x^2+x \right]_{-1}^2= & & \displaystyle \frac{2}{3}\{2^3-(-1)^3\} \\ &-& \hspace{ 2pt }2\hspace{ 2pt }\{2^2-(-1)^2\} \\ &+& \hspace{ 10pt }\{2\hspace{ 4pt }-(-1)\hspace{ 4pt }\} \end{eqnarray}\)
さて、この方法を用いて、最初から最後まで答案をかくと以下のようになります。
同類項どうしを先に計算する・見本答案
\(\displaystyle \int_{-1}^2 (2x^2-4x+1) dx \)
\(=\left[ \displaystyle \frac{2}{3}x^3-2x^2+x \right]_{-1}^2\)
\(\begin{eqnarray}= & & \displaystyle \frac{2}{3}\{2^3-(-1)^3\} \\ &-& \hspace{ 2pt }2\hspace{ 2pt }\{2^2-(-1)^2\} \\ &+& \hspace{ 10pt }\{2\hspace{ 4pt }-(-1)\hspace{ 4pt }\} \end{eqnarray}\)
\( =\displaystyle \frac{2}{3}\cdot9-2\cdot3+3\)
\(=3\)
いかがでしょう。定積分の計算はこれが圧倒的におすすめです。
定積分の工夫の別の見方
上で紹介した計算の工夫ですが、見方を変えれば下のような計算をしているということです。
\(\displaystyle \int_{-1}^2 (2x^2-4x+1) dx \)
\(= \displaystyle \int_{-1}^2 2x^2 dx+\displaystyle \int_{-1}^2 -4x dx+\displaystyle \int_{-1}^2 1dx\)
この計算を続けると、
\(\displaystyle \int_{-1}^2 2x^2 dx+\displaystyle \int_{-1}^2 -4x dx+\displaystyle \int_{-1}^2 1dx\)
\(=\left[ \displaystyle \frac{2}{3}x^3 \right]_{-1}^2+\left[ -2x^2 \right]_{-1}^2+\left[ x \right]_{-1}^2\)
\(\begin{eqnarray}= & & \displaystyle \frac{2}{3}\{2^3-(-1)^3\} \\ &-& \hspace{ 2pt }2\hspace{ 2pt }\{2^2-(-1)^2\} \\ &+& \hspace{ 10pt }\{2\hspace{ 4pt }-(-1)\hspace{ 4pt }\} \end{eqnarray}\)
\( =\displaystyle \frac{2}{3}\cdot9-2\cdot3+3\)
\(=3\)
やっている計算は同じことですが、先のように計算した方がスマートですね。
ただし、正確に速く計算できればなんでもいいのです。