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たすきがけの因数分解 

たすきがけによる因数分解

ポイント

高校数学の第一のハードルがこの「たすきがけによる因数分解」です。

結局はただの計算技術です。難しく考えないで、ただひたすら練習しましょう。

たすきがけ

たすきがけの因数分解とは、
\(acx^2+(ad+bc)x+bd=(ax+b)(cx+d)\)

のような因数分解のことです。

具体例を見た方がはやいでしょう。


次の式を因数分解しなさい。
\(2x^2+7x+3\)

答えは
\(2x^2+7x+3=(x+3)(2x+1)\)

です。
つまり、展開するときに公式などなかったものなのです。
右辺を展開して、左辺にしてみてください。
公式うんぬんではなくて、分配法則により、 \(4\) 回かけ算するタイプの展開です。

なんの特徴もない式なので、因数分解はやや大変です。

因数分解の手順ですが、ずばり
「ただひたすらうまくいく数を探す」
のです。

もちろん、探し方は確立されています。
それこそが通称「たすきがけの方法」です。

たすきがけ因数分解の手順

\(acx^2+(ad+bc)x+bd=(ax+b)(cx+d)\)
のタイプの因数分解はどのように行えばいいのでしょうか。
順に見ていきましょう。

\(2x^2+7x+3\) を因数分解するとは、

\(2x^2+7x+3=(ax+b)(cx+d)\)
という式変形をすることです。

\(acx^2+(ad+bc)x+bd=(ax+b)(cx+d)\)
と見比べれば、
\(ac=2\)
\(ad+bc=7\)
\(bd=3\)
となる、\(a,b,c,d\) を見つけだせということです。

どうやって見つけるのかが、このタイプの因数分解のポイントになります。

これはもちろん、
\(ac=2\)
\(bd=3\)
から探します。

\(a,c\) の組み合わせは \((1,2)\) \((-1,-2)\)
\(b,d\) の組み合わせは \((1,3)\) \((-1,-3)\)
です。
※ \(a,b,c,d\) が分数やルートの場合のことはとりあえず考えなくて良いです。
整数の範囲で探しましょう。

いよいよたすき掛けです。下のようにかきます。

\(a,c\) の組み合わせは \((1,2)\) \((-1,-2)\)
\(b,d\) の組み合わせは \((1,3)\) \((-1,-3)\)
をこの中に入れるのです。
まずは \(a=2,c=1\) として入れてみましょう。
目指すは、\(ad+bc=7\) です。

次に考えることは、
\(b=1,c=3\) なのか
\(b=3,c=1\) なのか
\(b=-1,c=-3\) なのか
\(b=-3,c=-1\) なのか
です。
どれをいれたら、 \(ad+bc=7\) になるのか。
これを考えます。

うまい方法があるわけではなく、ひたすら計算をします
数値が簡単ならば、暗算で済むと思います。

これで見つかりました。
\(a,b,c,d\) の順に見つかった数を並べます。

\(2,1,1,3\) ですね。
これを
\((2x+1)(1x+3)\) のように \((ax+b)(cx+d)\) の \(a,b,c,d\) に入れます。

\(2x^2+7x+3=(2x+1)(x+3)\)

ということです。
これで因数分解が完了です!

※\(a=1,c=2\) は考えなくてよいのですが、わかりますか?
\(a=1,c=2\) で進めると、
\(2x^2+7x+3=(x+3)(2x+1)\)
となります。
先の答え、
\(2x^2+7x+3=(2x+1)(x+3)\)
と本質的に何も変わらない、同じ答えが得られます。考える必要はありません。

また、\(a=-2,c=-1\) も考える必要はありません。
これで進めていくと
\(2x^2+7x+3=(-2x-1)(-x-3)\)
という因数分解が見つかりますが、
右辺の \(2\) つの ( )は、どちらも \(-1\) でくくれるため
結局、\((-2x-1)(-x-3)=-(2x+1)×\{-(x+3)\}=(2x+1)(x+3)\)
となります。


どんどん具体例を見て、たすきがけに慣れていきましょう!

例2

次の式を因数分解しなさい。
\(6x^2-7x-5\)

解説

積の分解をすると
\(a,c\) は \((6,1)\),\((3,2)\)
\(b,d\) は \((-1,5)\) \((1,-5)\)
です。
この問題は、\((b,d)=(1,5)\)
から型に入れましょう。
※負の符号は後で考慮します。
こちらは絶対に \(1,5\) で決まりだからです。

次に考えることは、
\(a=1,c=6\) なのか
\(a=6,c=1\) なのか
\(a=2,c=3\) なのか
\(a=3,c=2\) なのか
この \(4\) 通りの中のどれかということです。

先ほどもかいた通りですが、調べるしかありません。
どんどん書いて調べていきましょう。

が見つかります。

\(a,b,c,d\) の順に見つかった数を並べます。

\(3,-5,2,1\) ですね。
これを
\((3x-5)(2x+1)\) のように \((ax+b)(cx+d)\) の \(a,b,c,d\) に入れます。

\(6x^2-7x-5=(3x-5)(2x+1)\) ですね!

このように、積の分解の候補がたくさんになると、調べる量が増えてしまいます。
ある程度は数に関する勘を働かせていきましょう。
上の例でいうならば、
\(b=5\) にかけあわせる相手が大きすぎると、
\( ad+bc=-7\) にならなそうですね。
つまり \(c=6,-6\) はなさそうだと検討がつきます。

例3

次の式を因数分解しなさい。
\(6x^2-5x-4\)

解説

\(a,c\) の組み合わせは
\(6,1\)
\(3,2\)
の \(2\) 通り

\(b,d\) の組み合わせは
\(4,-1\)
\(-1,4\)
\(-4,1\)
\(1,-4\)
\(2,-2\)
\(-2,2\)
の \(6\) 通り

全組み合わせは単純に \(2×6=12\) 通りもあります。

何の策もなく調べても、数に対する勘が優れていれば
\(2,3\) 回調べるだけで見つかることもあるでしょう。

しかし・・・
運悪く、\(7,8\) 回調べないと見つからないなんてことも・・・

そこで、絶対に答えにならないものを見つける方法を伝授しましょう!

結論を先にかくと
\(a\) と \(b\) は互いに素でなくてはならない。
\(c\) と \(d\) は互いに素でなくてはならない。
という規則があります。

「互いに素」とは、公約数を \(1\) 以外に持たないということです。

つまり、ダメな例、実際は調べなくていい例を見てみましょう

\(a,b\) の公約数 \(2\) があります。
これは、 \(ad+bc\) の値を調べるまでもなく不成立なんです。

どうしてかなのか。
もしこれでうまくいくのならば、
\(6x^2-5x-4=(6x-4)(x+1)\)・・・(不成立の式ですよ、念のため)
と因数分解されますね。

この式の右辺ですが、共通因数 \(2\) でくくれます。
\(6x^2-5x-4=2(3x-2)(x+1)\)・・・(不成立の式ですよ、念のため)

明らかにおかしいですよね。
だって、左辺の \(6x^2-5x-4\) は \(2\) を共通因数としてくくれないですから。

先に結論をかいた通り、
\(a\) と \(b\) は互いに素でなくてはならない。
\(c\) と \(d\) は互いに素でなくてはならない。
なんです。

この事実を知ったうえで改めて、因数分解すべき式を見てみましょう。

\(6x^2-5x-4\)
を因数分解します。

\(a,c\) の組み合わせは
\(6,1\)
\(3,2\)
の \(2\) 通り

\(b,d\) の組み合わせは
\(4,-1\)
\(-1,4\)
\(-4,1\)
\(1,-4\)
\(2,-2\)
\(-2,2\)
の \(6\) 通り

\(b,d=(2,-2),(-2,2)\) は除外されます。
\(a,c\) の組み合わせは \((6,1)\),\((3,2)\) どちらであっても
共通因数 \(2\) がつくれてしまうからです。

よって、\((b,d)\) は \((4,1)\) であり、負の符号がどちらかにつきます。
負の符号は後回しで、型に数値をいれましょう。

\(a\) と \(b\) は互いに素なので、
\(a=1,c=6\) か
\(a=3,c=2\) のいずれかです。
ここまで絞れたらあとはきちんと書いて計算して調べきりましょう。
\(c=6\) は \(bc\) が大きすぎてうまくいかないくらいすぐにわかりますね。

これでうまくいきます。
\(6x^2-5x-4=(3x-4)(2x+1)\)

解の公式ですべて解決!?

ところで、必殺の裏ワザもあります。

それは、「\(2\) 次方程式の解の公式」です。
中学校で学習しましたよね?

\(6x^2-5x-4=(3x-4)(2x+1)\)
という因数分解でしたが、上のようにたすきがけをしなくともこの因数分解をする方法があります。

\(6x^2-5x-4=0\) という \(2\) 次方程式を解くのです。
そうすれば、おのずと因数分解もわかります。

解の公式より、

\(x=\displaystyle \frac{-(-5) \pm \sqrt{(-5)^2-4×6×(-4)} }{2\cdot6}\)

\(x=\displaystyle \frac{5 \pm 11}{12}\)

\(x=\displaystyle \frac{5+11}{12}=\displaystyle \frac{4}{3},\displaystyle \frac{5-11}{12}=-\displaystyle \frac{1}{2}\)

なので、\((x-\displaystyle \frac{4}{3} )\{x-(-\displaystyle \frac{1}{2}) \}=0\) を何倍かしたものが、\(6x^2-5x-4=0\) です。

\(x^2\) の係数に着目すれば、明らかに \(6\) 倍なので、

\(6x^2-5x-4=(x-\displaystyle \frac{4}{3} )\{x-(-\displaystyle \frac{1}{2}) \}×6\)

\(=3(x-\displaystyle \frac{4}{3} )×2\{x-(-\displaystyle \frac{1}{2}) \}\)

\(=(3x-4)(2x+1)\)

このように、たすきがけで見つけた因数分解と同じ答えを得ます。

解の公式での解法に何の落ち度もありませんので、この方法を使ってもOKです。

解の公式は、高校数学において非常に頻繁に使う道具です。
この因数分解のときに「たすきがけ」ではなく、「解の公式」で因数分解するのも全然ありです。

ただし・・・たすきがけも習得しておかないと今後困ることもありますので、そのつもりで。

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