指数法則の拡張
ここからは「指数関数」の学習に入ります。
指数関数とは、\(y=a^x\) という関数です。
この指数関数の学習に向けて、まずは指数の計算から入門します。
中学で学習した指数法則を、
より広い範囲に適用し、
指数関数へと発展させていきます。
指数法則(おさらい)
今までの指数は「正の整数」のみが用いられていました。
それは、何回かけるのかを表すものでした。
例
\(2^5=2×2×2×2×2\)
\((-1)^3=(-1)×(-1)×(-1)\)
これに関して、以下の指数法則が成り立ちます。
\(a^m×a^n=a^{m+n}\)
\((a^m)^n=a^{mn}\)
\((ab)^n=a^n b^n\)
\(\displaystyle \frac{a^m}{a^n}=a^{m-n}\) ただし \(m \gt n\)
\(a^n\) の \(a\) を底、\(n\) を指数といいます。
具体例
\(2^3×2^4=2^{3+4}=2^7\)
\((5^2)^3=5^{2×3}=5^6\)
\((2×3)^5=2^5×3^5\)
\(\displaystyle \frac{3^7}{3^5}=3^{7-5}=3^2\)
ここまでは復習事項になります。
ここがあやふやは人は、しっかり基礎固めしてから次に進みましょう。
まずは上の指数法則が、スラスラと使いこなせるまで要練習です。
\(0\) 乗と負の数の指数
高校数学では、指数が負のとき、\(0\) のときについても扱います。
指数が負の数のときはどうなるのでしょう。
指数が \(0\) のときは?
以下のように定義します。
\(a^{-n}=\displaystyle \frac{1}{a^n}\)
\(a^{0}=1\)
ただし \(a \neq 0\)
負の数の指数
指数法則の \(1\) つである
\(\displaystyle \frac{a^m}{a^n}=a^{m-n}\)
には、
ただし \(m \gt n\)
という指定がついています。
これは指数が正の数になるような範囲で考える、という意味です。
しかし、この限定をなくしてみたらどうなるのか。
つまり、指数が正の整数ではなく、つまり負の数のときはどうなるのか?
例
\(\displaystyle \frac{a^2}{a^5}=a^{2-5}=a^{-3}\)
\(a^{-3}\) という値は、どんな値なのか。どんな計算をすればよいのか。
\(a\) を \(-3\) 回かける?
なにそれ・・・?
そんなものは考えない!
定義しない!
という態度で進めていたのが、中学数学だったわけです。
ここからは、指数が負の数のときについても扱っていくことにします。
指数法則から
\(\displaystyle \frac{a^2}{a^5}=a^{2-5}=a^{-3}\)
となりましたが、分数の意味から考えて計算すれば、
これは
\( \displaystyle \frac{a×a}{a×a×a×a×a}=\displaystyle \frac{1}{a^3}\)
つまり、
\(a^{-3}=\displaystyle \frac{1}{a^3}\)
となります。
よって
\(a^{-n}=\displaystyle \frac{1}{a^n}\)
と定義することが自然であることが納得できますね!
※分母に \(0\) がきてはいけないので、 \(a \neq 0\) です。
\(0\) 乗
\(a^{0}=1\)
についてです。
まずは、この式の意味を確認します。
\(a\) はどんな数でもいいのです。
どんな数も \(0\) 乗すると \(1\) になるという意味です
\(2^0=1\)
\(3^0=1\)
\((-1.5)^0=1\)
などです。
この定義が妥当であることを確認しましょう。
分数の約分から、当然のごとく
\(\displaystyle \frac{a^m}{a^m}=1\)
ですね。
一方この式を指数法則から計算すれば、
\(\displaystyle \frac{a^m}{a^m}=a^{m-m}=a^0\)
よって、
\(a^{0}=1\)
深く考え込む前に、まず暗記をしてください。
あれ?どうしてだっけ、と気になったら、上の話を
再現できるようになると良いでしょう。
まとめ
\(0\) 乗と負の数の指数
\(a^{-n}=\displaystyle \frac{1}{a^n}\)
\(a^{0}=1\)
ただし \(a \neq 0\)
しっかり暗記ですよ!
例題1
次の値を求めなさい。
(1)\(3^{-2}\)
(2)\((\displaystyle \frac{1}{2})^{-3}\)
(3)\(2^0\)
解説
(1)\(3^{-2}=\displaystyle \frac{1}{3^2}=\displaystyle \frac{1}{9}\)
(2)\((\displaystyle \frac{1}{2})^{-3}=\frac{ 1 }{ (\frac{ 1 }{ 2 })^3 }=8\)
(3)\(2^0=1\)
指数の拡張なんて意味があるの?という疑問
指数が負の数って??
わからない・・・
こんなことしていいの??
そんな「なぜ?」で頭がいっぱいになっている人もいることでしょう。
とにかく、指数が負の数や \(0\) のときも認めてください。
公式として覚えてください。
何はともあれ、計算がスラスラできるように慣れ親しんでください。
これが重要です。
そんなこと言ったって、\(-3\) 回かけるとか意味わかんないから嫌だ!
って釈然としない気持ちを抱えた真面目な人もいることと思います。
そんな人のために少しお話しします。
まず、この「指数法則の拡張」なんですが、
もはや、「何回かけるか」という意味を捨てています。
\(-3\) 回かけるとか \(0\) 回かけるという操作は存在しません。
\(2^{-3}\) は \(2\) を \(-3\) 回かけるという意味はなく
ただ、\(2^{-3}=\displaystyle \frac{1}{2^3}\) なのです。
ただの計算の規則です。
ただそれだけなんです。
もちろん何の考えもなく勝手に決めた計算規則ではありません。
これしかない!
この定義が自然である、
矛盾がない!
というように計算規則を定義しています。
指数関数の構造ありき
少し視点を変えてみましょう。
この指数法則はそもそも人間が決めたものではなく、
指数関数(これから学習していくもの)の構造としてもともと存在していたものです。
それを、現在の我々が用いている数式の表記で表すと、
この指数法則になった、
とも言えます。
「人間にとって実感のわく数の操作」とはまったく関係なく、
数の仕組み・構造が宇宙開闢以来(あるいはそれを超えたところ)あるわけです。
今回の話題では、 \(y=a^x\) という指数関数の構造です。
人類誕生のずっと前から、この構造があるわけです。
そして、 \(y=a^x\) の \(x\) が \(1\) 以上の整数(自然数)のときは、
\(a\) を何回かけるか、という人間の実感のわく操作と一致していたのです。
理解していただけたでしょうか?
半分くらい理解できたような気がする・・・程度で十分です。
とにかく計算規則に習熟しましょう。
そうすれば、テスト、入試で点数が取れますから。
そして、いつか、先人たちが作った数学の意味が腑に落ちるときも来ますので。
先人たちも、はじめからこの指数法則で計算していたわけでありません。
試行錯誤の末に、現代のようにスッキリ定義が整えられたのです。
そして、凡人である普通の高校生たちに指導されているわけです。