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不等式の証明・その5相加相乗の関係

「相加平均」は「相乗平均」以上である

相加平均と相乗平均の大小関係

\(a \gt 0,b \gt 0\) のとき、

\(\displaystyle \frac{a+b}{2} \geqq \sqrt{ab}\)

等号成立は \(a=b\) のとき


これを相加平均と相乗平均の大小関係といいます。

\(a+b \geqq 2\sqrt{ab}\)
の形で使うことが多いです。

相加平均?相乗平均?

「平均」とは実はいろいろな平均が定義されています。
相加平均、相乗平均、調和平均、2乗平均・・・
様々にありますが、別にこれらにくわしくなる必要はありません。

相加平均

相加平均とは、今まで日常的に使っていた平均のことで、
\(n\) 個の数をたして、 \(n\) で割れば、それが相加平均です。

\(a,b\) の相加平均は \(\displaystyle \frac{a+b}{2}\)

\(a,b,c\) の相加平均は \(\displaystyle \frac{a+b+c}{3}\)

相乗平均

相乗平均とは、普通の人ならばこの単元で初めて目にするレアな平均で、
\(n\) 個の数をかけて、 \(n\) 乗根をとれば、それが相乗平均です。
\(n\) 乗根なんて習ってない!という人だらけでしょう。
もう少ししたら、指数関数という単元で習います。

\(ab=x^2\) となる 正の実数 \(x\) が \(a\) と \(b\) の相乗平均

\(abc=x^3\) となる 正の実数 \(x\) が \(a\) と \(b\) と \(c\)の相乗平均

正直いって、あまりこだわらなくてOKです。

とにかく、

\(a+b \geqq 2\sqrt{ab}\)

の不等式が必ず成り立つ、と覚えてください。それでOKです。

※\(3\) 文字以上の相加相乗の関係は、基本的には無視してもらってOKです。

\(\displaystyle \frac{a+b+c}{3} \geqq \sqrt[ 3 ]{ abc }\)

ほぼ出会うことはないでしょうし、必要もないでしょう。

例題1

\(a \gt 0\) のとき、次の不等式を証明しなさい。また、等号が成り立つときを調べなさい。

\(a+\displaystyle \frac{4}{a} \geqq 4\)

解説

\(a \gt 0\) , \(\displaystyle \frac{4}{a} \gt 0\) だから、
※この文言は必須です。

相加平均と相乗平均の大小関係より、

(左辺)\(=a+\displaystyle \frac{4}{a} \geqq 2\sqrt{a×\displaystyle \frac{4}{a}}=4\)

よって、\(a+\displaystyle \frac{4}{a} \geqq 4\)

また、等号成立は \(a=\displaystyle \frac{4}{a} \) のときであるから

\(a^2=4\)
\(a \gt 0\) より、
\(a=2\)
したがって \(a=2\) のときに等号成立

例題2

\(a \gt 0, b \gt 0\) のとき、次の不等式を証明しなさい。また、等号が成り立つときを調べなさい。

\(a+b+\displaystyle \frac{1}{a+b} \geqq 2\)

解説

分母が \(a+b\) なので、分子に \(a+b\) があれば、かけ算したときに約分できます。

つまり、 \(a+b\) を1かたまりとみなします。

\((a+b)+\displaystyle \frac{1}{a+b} \geqq 2\sqrt{(a+b)×\displaystyle \frac{1}{a+b}}\)

のようにすれば、根号の中から文字が消えますね。
これがこの問題の出題意図です。

ですから、この構想を答案にします。

証明

\(a \gt 0 , b \gt 0\) なので

\(a+b \gt 0 , \displaystyle \frac{1}{a+b} \gt 0 \)
※この文言は必須です。

相加平均と相乗平均の大小関係より、

(左辺)\(=a+b+\displaystyle \frac{1}{a+b} \geqq 2\sqrt{(a+b)×\displaystyle \frac{1}{a+b}}=2\)

よって、\(a+b+\displaystyle \frac{1}{a+b} \geqq 2\)

等号成立は、\(a+b=\displaystyle \frac{1}{a+b}\) のとき

\((a+b)^2=1\)
より、\(a+b=\pm1\)
\(a \gt 0 , b \gt 0\) なので

\(a+b=1\) のとき等号成立

例題3

\(a \gt 0, b \gt 0\) のとき、次の不等式を証明しなさい。また、等号が成り立つときを調べなさい。

\((1+\displaystyle \frac{b}{a})(1+\displaystyle \frac{a}{b}) \geqq 4\)

解説

\(\displaystyle \frac{b}{a}\) と \(\displaystyle \frac{a}{b}\) の積で、文字が無くなりますよね。

これが相加平均と相乗平均の関係を使うことを匂わせています。
だって、積が根号の中に入るわけで、そのときに文字が消えないといけませんから。

つまり、左辺を展開します。

(左辺)\(=1+\displaystyle \frac{b}{a}+\displaystyle \frac{a}{b}+1\)

\(=2+\displaystyle \frac{b}{a}+\displaystyle \frac{a}{b}\)・・・①

\(a \gt 0, b \gt 0\) のとき

\(\displaystyle \frac{b}{a}\gt 0\)、\(\displaystyle \frac{a}{b}\gt 0\)
だから、
相加平均と相乗平均の大小関係より、

①\(=2+\displaystyle \frac{b}{a}+\displaystyle \frac{a}{b} \geqq 2+2\sqrt{\displaystyle \frac{b}{a}×\displaystyle \frac{a}{b}}=4\)

より、\((1+\displaystyle \frac{b}{a})(1+\displaystyle \frac{a}{b}) \geqq 4\)

等号成立は\(\displaystyle \frac{b}{a}=\displaystyle \frac{a}{b}\) のときなので、

\(b^2=a^2\)
\(a \gt 0, b \gt 0\) なので、
\(a=b\) で等号成立

例題4

\(a \gt 0\) のとき

\(a+\displaystyle \frac{9}{a}\) の最小値を求めなさい。またそのときの \(a\)を求めなさい。

解説

ちょっと違うタイプの出題ですね。

相加平均と相乗平均の大小関係

\(a \gt 0,b \gt 0\) のとき、

\(\displaystyle \frac{a+b}{2} \geqq \sqrt{ab}\)

等号成立は \(a=b\) のとき。


ですが、見方を変えれば
\(a+b\) の最小値が、 \(a=b\) のとき、 \(2\sqrt{ab}\) であることを示しています。
※ \(a \gt 0, b \gt 0\) のとき

つまり、
\(a \gt 0\)、\(\displaystyle \frac{9}{a} \gt 0\) だから、

相加平均と相乗平均の大小関係より、

(左辺)\(=a+\displaystyle \frac{9}{a} \geqq 2\sqrt{a×\displaystyle \frac{9}{a}}=6\)

最小値は、等号が成り立つときである。

等号成立は \(a=\displaystyle \frac{9}{a} \) のときであるから、

\(a^2=9\)
\(a \gt 0\) より、\(a=3\)

よって、\(a=3\) のときに最小値 \(6\)

まとめ

さて、最大のポイントは何か。

どんな問題のときに、相加相乗平均を使えばいいのか。

という点です。

このページを読んで学習してしているときは、
「相加・相乗平均を使う」ということを前提に問題を解いているわけですが、
いざ入試のときには、問題にポイントやテーマはかいてありません。

例題を \(4\) つ見てきましたが、すべてに共通しているのは、

2つの分数がかけあわさって、文字が約分で消える!
という点です。

このようなときは、相加相乗平均を使うかも!?と意識しておいてください。

まあ結局は解法パターンの暗記なんです。

高校数学の大部分はこれです。解法パターンの暗記ですよ!

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