絶対値を含む不等式の証明
絶対値記号がついている不等式の証明は、(左辺)\(-\)(右辺)\(\gt 0\) を示すことが難しいのですが、
両辺の \(2\) 乗を大小比較することで解決できます。
絶対値記号は \(2\) 乗と相性が良いのです。
絶対値の性質として
\(| a |^2=a^2\)
があります。
これがあるからこそ、
(左辺)\(-\)(右辺)\(\gt 0\) が難しい計算も、
(左辺)\(^2-\)(右辺)\(^2\)\(\gt 0\)
の計算処理ができるのです。
つまり!!
\(| A | \gt | B |\) の証明は、\(| A |^2 – | B |^2 =A^2 -B^2 \gt 0\) を示すことになります。
これはもちろん\(| A | \gt 0 , | B | \gt 0\) だからです。
この証明全体の方針は、根号のついた不等式を証明するときとまったく同じです。
※\(a \gt 0,b \gt 0\) のとき、
\(a^2 \gt b^2\) ならば、\(a \gt b\) が成り立つことの利用です。
そのさい用いられる式変形の手段は以下の3つ.絶対に暗記です。
2.\(| a || b | = | ab |\)
3.\(| a |-a \geqq 0\) ※等号成立は \(a\geqq 0\) のとき
1.\(| a |^2=a^2\) で絶対値を外せるものはどんどん外します。
2.\(| a || b | = | ab |\) を使用したのち、
3.\(| ab |-ab \geqq 0\)
以上証明終了、と使うことが多いです。
※3つの性質がなぜ成り立つかについては割愛します。自分で考えてみてください。すべて、あたりまえだな、と思えるはずです。
例題1
次の不等式を証明しなさい。また、等号が成り立つときを調べなさい。
\(| a |+| b | \geqq | a+b |\)
解説
絶対値記号ありの不等式は、両辺の \(2\) 乗の差 \(\gt 0\) を示す。
とにかく暗記してください。
定番パターンです。
\(| a |+| b | \geqq 0\) かつ \(| a+b | \geqq 0\)・・・①
(左辺)\(^2-\)(右辺)\(^2=(| a |+| b |)^2- | a+b |^2\)
\(= a^2+2| a || b |+b^2-(a+b)^2 \)
※ \(| A |^2=A^2\) を使用
\(| a+b |^2\) を \((a+b)^2 \) に変えました。
\(=a^2+2| ab |+b^2-(a+b)^2 \)
※\(| a || b | = | ab |\) を使用
\(=a^2+2| ab |+b^2-(a^2+2ab+b^2) \)
\(=2| ab |-2ab\)
\(=2(| ab |-ab) \geqq 0\)・・・②
※\(| a |-a =\geqq 0\) を使用
①、②より、\(| a |+| b | \geqq | a+b |\)
また、等号成立は \(ab \geqq 0\) のときである。
まとめ
\(| A | \gt | B |\) の証明
\(| A | \gt 0 , | B | \gt 0\) ・・・①
\(| A |^2 – | B |^2 =A^2 -B^2 \gt 0\) ・・・②
①、②より、\(| A | \gt | B |\) (証明終了)
式処理の道具
\(| a |^2=a^2\)
\(| a || b | = | ab |\)
\(| a |-a \geqq 0\) ※等号成立は \(a\geqq 0\) のとき