複素数の四則計算
虚数単位、複素数の定義まで行いました。
次に複素数の計算規則を定義します。
・虚数単位 \(i\) は、今までの文字式の文字と同じように計算する。
・ただし、 \(i^2\) がでてきたら、ただちに \(-1\) におきかえる。
・ルートの中が負の数のときは、\(i\) を使った表記に直してから計算する。
\(\sqrt{-a}=\sqrt{a×-1}=\sqrt{a}×\sqrt{-1}=\sqrt{a} i\)
なぜこのような計算規則になるのか。
これは、前から書いている通りなのですが、
先人たちが虚数の性質、虚数が織りなす構造を調べまくった結果です。
さらに、虚数単位 \(i\) を導入することで、とても簡潔で直感にあう計算規則にまとめられたのです。
我々は、先人の知恵を盲目的に反復練習することが第一優先事項です。
その結果、美しい複素数の世界が広がっていることが約束されているのですから!
※根本定義に対する「なぜ?」は、真の数学探求者にのみに許された険しい道です。好奇心旺盛な方は、この「なぜ?」を持ち続けてください。いつか花開くことでしょう。
例1
\(\sqrt{-8}+\sqrt{-2}\)
\(=\sqrt{8}i+\sqrt{2}i\)・・・\(\sqrt{-a}=\sqrt{a} i\) を使用
\(=2\sqrt{2}i+\sqrt{2}i\)
\(=3\sqrt{2}i\)
例2
\((5+3i)+(1-2i)\)
\(=5+3i+1-2i\)
\(=6+i\)
例3
\(4i×(1+3i)\)
\(=4i+12i^2\)
\(=4i+12×(-1)\)・・・\(i^2=-1\) を使用
\(=-12+4i\)
例4
\((5-\sqrt{-3})^2\)
\(=(5-\sqrt{3}i)^2\)
\(=5^2-2×5×\sqrt{3}i+(\sqrt{3}i)^2\)
\(=25-10\sqrt{3}i+3i^2\)
\(=25-10\sqrt{3}i+3×(-1)\)
\(=22-10\sqrt{3}i\)
ここで、\((\sqrt{-3})^2\) を
\(\sqrt{-3}×\sqrt{-3}=\sqrt{-3×(-3)}=\sqrt{9}=3\) とすると誤りです。
ルートの中が負の数のときは、\(i\) を使った表記に直してから計算する。
というルールに従ってください。
\(\sqrt{-3}×\sqrt{-3}=(\sqrt{3}i)^2=3i^2=-3\) これが正しい計算です。
例5
\(2i^3+3i^4-(2i)^2\)
\(=2i×i^2+3×i^2×i^2-4i^2\)
\(=-2i+3+4\)
\(=7-2i\)
複素数で割る
勘のいい人は気づいていますね?
上の例では、「分母に複素数があるとき」を扱っていません。
つまり、「複素数で割るとどうなるの?」ということです。
下の例で見ていきましょう。
例1
\(5÷(-3i)\)
\(=\displaystyle \frac{5}{-3i}\)
虚数単位 \(i\) は、今までの文字式の文字と同じように計算する。
というルールはここでも崩れません。
上のわり算は正しい計算です。
が、まだ計算の途中です。
さて、「分母が虚数である数」とはどんな数なのでしょうか?
また数の拡張をしなくてはならないのでしょうか?
結果から言えば、数の拡張はもうしなくてよいのです。
複素数の四則計算の結果は必ず、 \(a+bi\) の形に収まります。
\(\displaystyle \frac{5}{-3i}\) の分母、分子に \(i\) をかけます。
\(\displaystyle \frac{5}{-3i}=\displaystyle \frac{5i}{-3i^2}\)
\(=\displaystyle \frac{5i}{3}\)
\(=\displaystyle \frac{5}{3}i\)
これが答えです。
分母に \(\sqrt{a}\) を残さないで有理化しましたが、あれと似たような感じですね。
例2
次の計算をしなさい。
\(-\displaystyle \frac{4}{1+i}\)
解説
いったい何を計算しろというのか?
\(a+bi\) の形に式変形をしなさい、という意味です。
分母に複素数が残っている状態は許されません。
さて変形のやり方ですが、「平方根が分母にあるときの有理化」とそっくりに行います。
分母、分子に \(1-i\) をかけます。
\(-\displaystyle \frac{4}{1+i}\)
\(=-\displaystyle \frac{4(1-i)}{(1+i)(1-i)}\)
\(=-\displaystyle \frac{4-4i}{(1-i^2)}\)
\(=-\displaystyle \frac{4-4i}{2}\)
\(=-2+2i\)
まさに、平方根が分母にあるときの分母の有理化とそっくりでしたね。
共役(きょうやく)な複素数
上の例で見た通り、分母に複素数があることは許されません。
・分母に \(bi\) がある式は、分母、分子に \(-i\) をかけることで、
分母を実数にします。
・分母に \(a+bi\) がある式は、分母、分子に \(a-bi\) をかけることで、
分母を実数にします。
※これは和と差の展開公式を利用しています。
\((a+bi)(a-bi)=a^2-b^2i^2=a^2+b^2\)
\(a+bi\) と \(a-bi\) を、互いに共役な複素数といいます。
\(\alpha=a+bi\) のとき、共役な複素数は \(\overline{ \alpha }\) で表します。
\(\overline{ \alpha }=a-bi\) です。
互いに共役な複素数は、分母を実数にするとき以外の様々で出てくる重要なペアです。